<高校野球北北海道大会:美幌7-0訓子府>◇24日◇北見地区1回戦◇北見市東陵公園

 美幌の右腕エース藤田勇輝(3年)が、7回参考ながら完全試合を達成した。高校入学後、最速100キロから130キロとスピードアップした直球と変化球のコンビネーションで訓子府打線を翻弄(ほんろう)。打者21人からを7三振を奪い、72球で封じ込めた。コールド発進したチームは、1953年(昭28)以来60年ぶり2度目の道大会を目指す。

 ベンチで打順を待つ間に、美幌・藤田の快挙は達成された。5-0の7回裏2死二、三塁。1番飛井優希遊撃手(2年)の打球が中前で弾むと、2人の走者が一気に生還し、コールド勝ちが決まった。「(完全試合は)意識していませんでした。知っていたら、打たれたと思います」と藤田。8日開票のAKB48選抜総選挙で1位になった指原莉乃のように、少しヘタレ気味に言った。

 コメントとは裏腹に、投球は完璧だった。直球にスライダー、カーブ、チェンジアップを織り交ぜ、訓子府打線のタイミングを外し続けた。内野ゴロ8、内野飛球3、奪三振7。外野への飛球は3本だけだった。「今日は藤田の独り舞台でした」と、4月に就任した佐藤淳平監督(34)は手放しで褒めた。

 昨秋は地区3回戦で、センバツ21世紀枠代表の遠軽に1-5で敗れた。昨年12月から3月までは雪を踏みながら、学校の周囲を毎日9周走って下半身強化。夕食は丼でご飯を3~5杯食べた。入学時から10キロ増えた体重と強くなった下半身で直球の威力が増し、変化球も切れるようになった。主将の布施光汰朗右翼手(3年)は「球の勢いも、マウンドの存在感も、昨年とは全く違う」と話す。

 野球部ではエース、校内では常にセンターで周りを盛り上げる。1年時の文化祭ではAKB48の「Beginner」を舞台中央、最前列で踊った。1カ月後の文化祭でも、ミュージカルの「赤い靴」で大役が期待される。「チームでもクラスでも中心」と沢田悠太捕手(3年)は言う。

 初戦の快投で、夏は60年ぶりの道大会進出も見えてきた。2回戦で対戦する清里の檜森雅仁投手(3年)は「球の威力はすごい。何とか打ちたい」と悲壮感を漂わせた。「次も平常心を忘れず投げ切りたい」。その先に、北見地区、そして北大会での“センター”が待っている。【中島洋尚】

 ◆藤田勇輝(ふじた・ゆうき)1995年(平7)10月5日、美幌町生まれ。美幌東陽小5年で野球を始める。最初は中堅手で、すぐに投手に転向。美幌北中3年の時には右肘骨挫傷を患った。高校では1年春からベンチ入り。ゲームで視力が落ちたため、常時着用するメガネがトレードマーク。家族は両親と弟、妹。174センチ、73キロ。右投げ右打ち。