<高校野球群馬大会:前橋商7-0前橋東>◇9日◇2回戦◇高崎市城南球場

 前橋商のプロ注目左腕、岩崎巧投手(3年)は5回1安打5奪三振無失点で、3年ぶりの甲子園へ好スタートを切った。

 岩崎が、“長谷部流”で復活への第1歩を踏み出した。前橋東との2回戦に先発し、5回を1安打無失点5奪三振の好投。チームも8回コールドで勝利を収めた。「緊張して序盤は硬くなったけど、少しずつ腕を振れるようになりました」。自己最速の141キロには遠く及ばぬ131キロ止まりだったが、岩崎は初戦突破に手ごたえをつかんでいた。

 昨秋、大きな壁にぶつかった。1年夏から背番号1を背負う岩崎だが、部内で最上級生になったことで考え込んでしまった。「どうしたら勝てるか。エースとして何をすべきか」。自身を「抱え込みやすい性格なんです」と評するだけに、深みにはまった。投球フォームも見失ってしまい、秋季県大会は初戦敗退。フォームの崩れから左肩を痛めてしまった。

 そんな時、1冊の本と出会った。サッカー日本代表主将の長谷部誠(29=ウォルフスブルク)の著書「心を整える。」。そこに「常に1時間前に(練習場に)着くようにしている」と書いてあった。この部分が胸に響いた。それまで、岩崎は開始ギリギリにグラウンドへ出ていた。「今思えば、体も心も準備ができてなくて、けがにつながってしまったと思います」。

 以後は1時間前にグラウンドへ出て、柔軟やストレッチをした。その日の練習テーマを考える時間にもなった。「肩も調子いいし、フォームのばらつきも自然と解消された。いい練習ができたなと思う日が多くなった」。体にも、心にも好影響が出てきた。

 スタンドには巨人、日本ハムなど7球団のスカウトが見守っていた。阪神中尾スカウトが「まだフォームにばらつきがあるかな」と評したように、まだ本調子ではない。だが、岩崎は「まだまだこれからです。決勝は完投します」と、自信に満ちあふれていた。【佐々木隆史】