<高校野球広島大会:広陵7-0賀茂>◇18日◇2回戦◇東広島アクアスタジアム

 広陵の下石涼太投手(3年)が18日、夏バージョンの省エネ投球を披露した。5回をわずか46球で、1安打無失点。全イニングが守備時間4分以内という、「速射砲投球」でリズムをつくった。センバツで219球を投げながら、済美の2年生エース安楽(あんらく)智大に投げ負けた悔しさが、ニュースタイルをつくり上げた。チームは賀茂にコールド勝ちで、春夏連続の甲子園出場に向け発進した。

 非の打ちどころがなかった。下石はプレーボールのサイレンが鳴りやむ前に、2球を投げた。相手打者に考えさせる暇も与えないまま、正確無比なボールを投げ込む。5回2死まで完全投球だ。15人目の打者となった重田に、二遊間を破られる中前打を許したが、5回無失点でマウンドを譲った。

 「夏は球数を減らす投球をしようと思う。テンポよく、コントロールもよくて、いい投球できた。100点ですね」

 全イニングの守備時間が4分以内という、超ハイテンポな投球は、先輩の広島野村をほうふつさせる。だが、中井哲之監督(51)は「下石の方がセンスはいい」と絶賛する逸材だ。

 分岐点となったのは、3月26日。センバツで済美の怪腕安楽と延長13回の投げ合いを演じた。下石も219球を1人で投げ抜いたが、最後は力尽きサヨナラ負けを喫した。「1球の重み、1球の怖さ、1球で試合が動くというのが分かった。最後まで粘れないところがあった」。その日以来、200球を超えるブルペン投球を行っても、集中力を途切らしたことはない。

 勝てる投手になるために、私的欲求も捨てた。センバツ直後に、正捕手だった柳沢一輝(3年)が投手に転向。間近で150キロに迫る剛球を見せられ、「速い球を投げたいと思っていたけど、自分の投球が定まっている」とキレと制球で勝負するスタイルを追求した。

 投打で軸を担っていた下石だが、この夏は投手への比重を強める。中井監督は、新チームで主軸も兼務してきたエースを「7番」にすえた。指揮官も「意識付けです。話はしていないけど、投手の仕事をして、打順が回ったら集中しろということ」と説明する。下石も「今日の朝、聞きました。中井監督の意図だと思います」と理解している。すべては勝つ確率を高めるためだと-。甲子園の悔しさは、甲子園でしか晴らせない。【鎌田真一郎】

 ◆下石涼太(しもいし・りょうた)1995年(平7)4月14日、山口・下関市生まれ。小6のとき、07年夏決勝を甲子園で見て広陵入学を決意。中学時代、下関マリナーズで投手兼遊撃手として活躍。高1春から遊撃手で定位置を獲得。2年では二塁手。2年秋からエースで、打撃でも主軸を務める。最速144キロ。174センチ、70キロ。右投げ左打ち。