第86回選抜高校野球大会(来年3月21日開幕、甲子園)の21世紀枠候補9校が13日、日本高野連から発表され、北海道からは名寄地区の天塩が選ばれた。地元の支援を受け、自然環境や地理的ハンデ克服が推薦理由。北緯44度53分に位置し、選出されれば、今春出場の遠軽(北緯44度3分)を抜き、史上最北端出場となる。21世紀枠の出場3校は、一般選考と同じ来年1月24日の選考会で決定。道内10地区で唯一、春夏通じて甲子園出場のない名寄地区の代表校が吉報を待つ。

 天塩が日本最北からの甲子園出場に1歩近づいた。午後3時過ぎ、6時間目に行われた講演会で体育館に集まった全校生徒の前で、中川尚之校長(58)から21世紀枠候補校に選ばれたことが発表された。ステージに立った部員20人を代表し、松本一希主将(2年)は「僕たち野球部だけの力ではない。それに感謝して、まだ甲子園はわからないですが、しっかり練習していきたい」と抱負を話した。

 全部員が天塩町内や近郊から通学し、今秋の名寄地区を突破。全道は初戦敗退(苫小牧中央に4-6)も16強で初めて候補校に名を連ねた。名寄地区からの候補校は03年の稚内大谷以来。町は日本海から吹く強風が特徴で、年間平均気温が約6度。道高野連の小嶋仁章専務理事(50)は「厳しい環境の中でやっているのが一番。除雪などのボランティア活動がすごく地域の助けになっている」と、主な推薦理由を話した。

 町を挙げた支援を受けている。2年前から、廃校になった小学校の体育館に人工芝を敷き、室内練習場として使用。今年7月には町内の公民館を借り、5泊6日の合宿を実施。2年ぶり4度目の出場だった今秋の全道大会では、縦1・5メートル、横15メートルの「巻き起こせ天塩旋風」の横断幕を町が作成してくれた。地域との結びつきも、21世紀枠候補校入りをアシストした。

 来年1月24日に全国の候補校9校中3校が選出され、甲子園出場校のない名寄地区全体の悲願もかかる。松本主将は「僕たちが最初になる。責任感と自覚を持って練習したい」と気を引き締めた。07年就任の土清水賢一監督(32)は「(候補に)選んでもらい名誉なこと。選出される気で、浮足立たないように地道にしっかり練習していく」と話した。朗報が届くことを信じ、天塩ナインが寒さと風に負けず練習に励む。【保坂果那】

 ◆天塩

 1948年(昭23)創立の公立校で、町内唯一の高校。生徒数162人(女子75人)。野球部は創立と同時に創部。道大会出場は春3、夏8、秋4度。最高成績は66年春、67年夏の4強。主な学校OBにタレントの故ポール牧さん。所在地は天塩町川口1464の4。中川尚之校長

 ◆名寄地区

 北海道高野連に登録12校は道内10地区で最少。登録校でも部員不足での不参加もあり、今秋は合同の1チームを含め8チームで全道大会出場1枠を争った。天塩は名寄産(7-4)、士別翔雲(4-1)、稚内大谷(3-1)と、トーナメントで3勝して勝ち上がった。91年夏に北照が小樽地区勢として春夏通じて初の甲子園出場を果たして以降、甲子園出場校がない唯一の地区となった。道大会優勝は3季通じて89年春の稚内大谷のみ。甲子園につながる夏は70年名寄、80、81、93年の稚内大谷の計4度、決勝で敗れている。稚内大谷は3度すべてサヨナラ負け。秋は63年士別の準優勝が最高。