<センバツ高校野球:神村学園6-1岩国>◇21日◇1回戦

 神村学園(鹿児島)が3番山本卓弥内野手(2年)の3ランなどで、岩国(山口)を破り開幕ゲームを勝利した。山本の両親は、この日が27度目の結婚記念日。故郷の宮崎からアルプス席に駆けつけた両親に、勝利と本塁打をプレゼントした。

 右翼ポール際への打球は切れずにスタンドへ吸い込まれた。1点リードの7回、2死一、三塁。山本は1ストライクからの内角低め126キロスライダーにうまく体を回転させた。「引っ張った打球が切れないのが僕の持ち味。すこし詰まったが、切れるとは思わなかった」。山本は自信を持って打球を追った。

 岩国の柳川は今大会注目の右腕。仮想柳川で設定したスライダーマシンを打ち込んで来たが、実際のキレや曲がりは想像以上。6回まで相手の2度の暴投で挙げた2点だけだった。そのウイニングショットを打ち砕いた3ラン。「8割がスライダーだった。左にはあまり曲がってこない」。狙い打ちだった。

 両親へささげる1発でもあった。14日の組み合わせ抽選で21日に試合が決まると母律子さん(47)から「ちょうど結婚記念日だね」とメールが来た。「勝ってお祝いしないとね」と返した山本。バットでしっかり祝砲。「試合中はそこまで頭が回らなかったんですが、両親にいいプレゼントになりましたね」とほほ笑んだ。

 4人兄弟の末っ子。甲子園の夢を追って宮崎から鹿児島へ進学した。この日、両親は一塁側アルプスで観戦。父実範さん(48)は「目の前をすごく打球が伸びていった。最高のプレゼント。ホームランボールは家に飾りたい」と感激した。

 185センチと大型ながら意外にも高校通算4本目だ。冬場に1日2000スイングを続けたという。強く遠くに引っ張った打球を運べるようになった。消灯時間後に歯磨きしていて怒られたり、AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」を歌いながら掃除するなど常にマイペースな男は、甲子園も平常心で臨めた。校歌を高らかに歌い、山本は最高の笑顔で両親の待つアルプス席へ向かって駆けていった。【石橋隆雄】

 ◆山本卓弥(やまもと・たくや)1997年(平9)9月3日、宮崎・日向市生まれ。大王谷小1年からウイングススポーツ少年団でソフトボールを始める。大王谷中では日豊ボーイズに所属。神村学園では1年夏からベンチ入り。昨秋の九州大会では4番。好きな野球選手はオリックス糸井。家族は両親と兄3人。185センチ、84キロ。血液型O。右投げ左打ち。