<センバツ高校野球:佐野日大7-5明徳義塾>◇3月31日◇準々決勝

 佐野日大(栃木)のドラフト候補左腕、田嶋大樹投手(3年)が延長11回152球を投げ抜き、初の4強に導いた。9安打5四死球と苦しみながらも、強豪明徳義塾(高知)を破った。

 思わずガッツポーズが出た。11回2死。田嶋が投じた152球目が、中堅手の元へ飛んだ。がっちり捕球したのを見届けると、左手を突き上げた。「終わった、と。本当にうれしい気持ちでした」。ポーカーフェースのエースも、思わず喜びを爆発させた。

 28日の智弁学園戦に続き、延長戦を制した。試合前には「体が全体的に重くて、うまく動かない感じ」と本調子でないことを漏らしていた。5回まで被安打1も、四死球は4。直球も最速143キロ止まりで高めに抜ける球も目立った。本来の姿にはほど遠かったが、明徳義塾の岸も初戦で延長15回を投げていた。先に降りるわけにはいかない。「負けられない気持ちでした」と奮い立たせた。

 フォームを修正しながら11回完投にこぎつけた。6回。1死から5連打され4点を奪われた。「今のフォームのままだと、タイミングが合っているなと感じました」と、7回からはテークバックを小さくし、ためを作った。打者のタイミングをずらし、7回は3者凡退で終えた。「今日はいいところがなかったですが、悪いなりに完投できました」と頭を使って、投げ抜いた。

 仲間の存在の大きさを感じる。10回裏。1死満塁、サヨナラの場面で、中前に抜ける打球を遊撃手が横っ跳びで体で止め、併殺でピンチを脱した。「1人が好き」という田嶋。練習後は仲間と話すより、ベッドの上で本を読むことを好む。そんな孤高のエースも「今日の勝利は(自分以外の)他のみんなの力。本当にいいチームです」としきりに感謝を口にした。

 春夏通じて初のベスト4までやってきた。「(4強入りには)あまり何とも思っていませんが、次も頑張りたいです」。どこまでもマイペースな左腕が、最愛の仲間とともに頂点を目指して突き進む。【和田美保】

 ◆2試合連続の延長戦完投勝利

 佐野日大・田嶋は2回戦の智弁学園戦(延長10回)に続いて完投勝利。センバツの2試合連続延長戦完投勝ちは67年吉良修一(津久見)が準決勝(10回)と決勝(12回)、90年青木秀樹(三重)が1回戦と2回戦(各11回)で記録して以来、24年ぶり3人目。

 ◆栃木県勢のセンバツ4強

 62年作新学院(優勝)73年作新学院(4強)76年小山(準V)86年宇都宮南(準V)88年宇都宮学園(4強)00年国学院栃木(4強)に次ぎ14年ぶり。