春季高校野球岩手県大会(22日開幕、一関運動公園野球場ほか)の抽選会が15日、盛岡市内で行われた。盛岡大付の今秋ドラフト候補右腕松本裕樹(3年)は、地区予選決勝の盛岡三戦で自己最速の150キロを計測。ひと冬を越え、大きく進化を遂げた。だが、チームのテーマは「脱・松本任せ」。松本に頼らず、春3連覇を狙う。23日の初戦の相手は盛岡中央に決まった。

 進化した盛岡大付・松本が県舞台に臨む。この春、目標「150キロ」をあっさり達成した。9日の盛岡地区決勝、盛岡三戦の延長13回表2死。全力ではない「少し力を入れた」直球で見逃し三振を奪うと、八幡平球場がどよめいた。「スタンドが盛り上がっていたので何かと思って振り向いたら、掲示板に150と…。びっくりした」。この日が春の公式戦初登板。9回から投げ、いきなり145キロを計測。回を追うごとに徐々にスピードが上がり、4イニング目で大台に乗った。

 冬場の努力が実った。昨秋は東北大会2回戦で青森山田に敗れ、2年連続のセンバツ出場を逃した。高校に入って初の長いオフを過ごすことになったが、松本は「逆に良かったな、というのはある」。夏の甲子園のため、じっくりと体作りに専念出来た。寮の食事で米の量を増やし、体重7キロ増に成功。太ももを中心に体全体ががっちりしたことで「前とは違う。球の質が良くなった」。持ち前のコントロールに力強さとキレが加わった。関口清治監督(36)は「このまま行けばもっと(球速が)出る」。バッテリーを組む狐崎風月(ふうが=3年)も「今、松本が日本一のピッチャーだと思う」とほれ込む。

 打っても通算49本塁打の松本が、投打ともに中心であることは変わりない。だが松本だけの力では勝てないことも昨秋、思い知らされた。主軸の菜花大樹外野手(3年)は「松本が投げれば勝てるという安心がどこかにあった。でも、みんなが打たないと勝てない」。開幕までの1週間、チームは打撃練習だけをひたすら続ける予定だ。マウンドも桜糀大輝、土井堅斗、大橋和弥(いずれも3年)の左3投手が急成長。「松本頼み」から脱し、総合力で春3連覇をつかみにいく。【高場泉穂】

 ◆松本裕樹(まつもと・ゆうき)1996年(平8)4月14日、横浜市生まれ。南瀬谷小1年で軟式チーム南瀬谷ライオンズで野球を始める。南瀬谷中では瀬谷ボーイズに所属。盛岡大付では1年春からベンチ入り。12年夏甲子園でもメンバー入り。13年春のセンバツでは安田学園戦に先発。183センチ、80キロ。右投げ左打ち。家族は両親、兄、弟。血液型A。