<高校野球春季岩手大会:盛岡大付5-1一関学院>◇27日◇準決勝◇一関運動公園野球場

 盛岡大付の150キロ右腕松本裕樹(3年)が今春の公式戦に初先発し、1失点で完投した。一関学院を7安打11奪三振。4番打者としても3安打2打点で勝利に貢献し、3年連続11度目の東北大会(6月5日~、秋田)出場を決めた。

 東北大会をかけた大一番でも松本はひょうひょうとしていた。無表情で、力を軽く抜きながらゆったりと投げるいつものスタイル。それでも「いいボールがいっていたと思う」。リリースの瞬間に指先に力を込めるため、打者の手元でボールはグイッと伸びる。5回表にソロ本塁打を許したが、その他の回は三塁を踏ませなかった。ヒットを打たれても、淡々と低めにボールを集め続けた。

 この日の最速は145キロ。地区大会で150キロをマークした直球にこだわらず、変化球を巧みに使った。「春になって変化(球)でストライクを取れるようになりました」。勝負どころで右打者にはスライダー、左打者にはチェンジアップを使い、11三振中10個が空振り。現在、投球に関しては関口清治監督(37)の指示は一切なし。打者の特徴や状況を自分で考え投げ分ける大人のエースに成長しつつある。

 3安打2打点と主砲の役割も果たした。2回表に先頭で二遊間を破って出塁し、先制のホーム。3回には1死二、三塁で左前に流し打つ2点タイムリー。序盤に5点をリードする原動力になり、余裕のマウンドにつなげた。

 バックネット裏では5球団6人のスカウトが見守った。「器用さがある」(阪神葛西スカウト)「指先の感覚がいい。コントロールが抜群」(巨人榑松スカウト)と、今秋ドラフト候補をあらためて評価した。

 駒大苫小牧時代の田中将大投手(ヤンキース)を練習試合で直接見ている関口監督は「マー君のすごさは速さではなく、球が浮かないことだった」と1年前から松本に言い聞かせてきた。昨秋以降、体重が増え、投球の軌道は着実に安定してきている。松本は「場所に関係なくいつも通りの投球をしていきたい」。東北大会でも淡々と進化した姿を見せる。【高場泉穂】

 ◆松本裕樹(まつもと・ゆうき)1996年(平8)4月14日、横浜市生まれ。南瀬谷小1年で軟式チームの南瀬谷ライオンズ入り。南瀬谷中では瀬谷ボーイズに所属。盛岡大付では1年春からベンチに入り、夏の甲子園メンバーに。昨年のセンバツでは安田学園戦に先発。183センチ、80キロ。右投げ左打ち。家族は両親、兄、弟。血液型A。