<高校野球春季東北大会:花巻東3-0盛岡三>◇9日◇決勝◇秋田市・こまちスタジアム

 花巻東が盛岡三との史上初の岩手県勢対決を制し、春秋通じ初の東北王者に輝いた。先発左腕高橋樹也(2年)が2安打11奪三振で初完投初完封。準決勝でエース左腕細川稔樹(3年)が左肩に打球を受けて投げられない中、自己最速141キロをマークするなど、ベストピッチングをみせて勝利に導いた。

 初完封でも、高橋は思い描いていたガッツポーズが出来なかった。2死一塁だったため、右翼方向へ上がった飛球を見ながら三塁側へベースカバー。「マウンドでほえたかったんですけど、あっち(盛岡三側)を向きながら少しほえました」と苦笑いだった。

 勝利の校歌を歌う場面でも歌が流れるまで1分以上かかるなど、バシッと決まらない歓喜のシーンと裏腹に、この日の高橋のピッチングはさえた。初回に自己最速の141キロを計測。走る直球にタイミングをずらすカーブなど変化球をうまく織り交ぜ、盛岡三打線から11三振を奪った。四球は1つのみと制球も抜群。継投を考え、3年生右腕佐々木竜次を早い段階から準備させていた佐々木洋監督(39)は「見事だった。間違いなく今までで一番」と、予想以上の働きをうれしそうにたたえた。

 西武の菊池雄星、日本ハム大谷と同期で慶大の小原大樹、現在のエース細川。花巻東の左腕が代々つけてきた伝統の背番号17を昨秋から背負う。「責任がある」と重みを感じながら何度も登板機会に恵まれたが、これまで投げた最長は5イニング。すぐ球が高く浮き、持たなかった。

 前日8日の八戸学院光星戦できっかけをつかんだ。エース細川のアクシデントで8回から緊急登板したにもかかわらず、光星打線を2回無安打とほぼ完璧に抑えた。「変化球で空振りが取れると自信がついた」。左肩の腫れが引かずに投げられない細川の分も「絶対抑える」。強い気持ちで期待に応え、チームに初優勝をもたらした。

 背番号17は、夏のラッキーナンバーでもある。11年夏にこの番号を背負った小原、13年夏に細川がそれぞれV投手になった。高橋は「夏に優勝したい」。夏2連覇のマウンドで、今度こそガッツポーズを決める。【高場泉穂】

 ◆高橋樹也(たかはし・みきや)1997年(平9)6月21日、岩手県花巻市生まれ。笹間一小3年から笹間一スポーツ少年団で野球を始める。西南中では主に投手。花巻東では1年秋からベンチ入り。173センチ、74キロ。左投げ左打ち。家族は両親、弟2人。血液型A。