<練習試合:済美2-0鳴門渦潮>◇5日◇済美グラウンド

 最速157キロ右腕が夏へ準備OKだ。済美(愛媛)安楽智大投手(3年)が5日、鳴門渦潮(徳島)との練習試合に先発。9回を4安打1四球、6三振を奪って完封勝利を挙げた。阪神など6球団、計12人のスカウト陣の前で、右肘の故障後は初めてのシャットアウト劇を演じた。

 試合を締めた96球目が、この日最速の147キロだった。済美・安楽は、鳴門渦潮の4番多田大輔捕手(3年)に、ズバッと外角低め直球を投げ込み、見逃し三振に仕留めた。右肘の故障後初めてとなる完封を4安打で飾った。

 西武、ソフトバンク、阪神など6球団12人のスカウト陣が集まる前で、堂々の結果を残した。立ち上がり、球速は130キロ台後半だったが、徐々にギアを入れ替えた。「どんどんストレートで押せたと思う。低めに投げられたら振り遅れていたし。マックスに近い状態になってきたと思います」。15日の初戦に向け、気持ちも高まってきた。

 今秋のドラフト1位候補に挙げる阪神中村勝広GM(65)の言葉も弾んだ。「魅力あふれる投手。いろいろあったと思うけど、V字回復している。予想していたより回復しているな。大型ピッチャーはなかなか出てこない。可能性を秘めている」。

 逆境を乗り越えた。昨秋の愛媛大会1回戦・西条戦で敗退。右肘に違和感を覚え、約3カ月間はキャッチボールも行わなかった。4月にようやく実戦復帰。ここまで右肩上がりに調子を上げてきた。今春の四国大会で準優勝した相手を封じ込んだ。「我慢強く投げられた。先に点を取られないように気を付けた」と、振り返る表情は明るい。

 上甲正典監督(67)は「147キロ出たのは本人が計画的にやってきた結果。投げて痛くない安心感もあって腕も振れていた」と納得の様子だった。安楽の言葉にも力が入る。「甲子園優勝が夢だけど、まずは甲子園に行かないと意味がない。みんなを連れて行きたい」。エースで4番で主将。3役を担う、まさしく大黒柱。たくましくなった安楽が、この夏も輝く。【宮崎えり子】