この夏甲子園を沸かせた盛岡大付の松本裕樹投手(3年)が9日、この日が期限のプロ志望届を岩手県高野連に提出し、日本高野連に受理された。最速150キロで制球力抜群の松本は上位指名が有力。夏に痛めた右肘の回復をみながら、23日のドラフト会議を待つ。

 プロ志望届を出した松本の表情は、晴れ晴れとしていた。期限日ぎりぎりに高校生94人の大トリの提出となったのは、進路をじっくり考える時間をつくるためだった。大学、社会人を含めさまざまな方向性を考えた末、「夢は変わらない」とプロへの気持ちを確認した。松本は提出後「自分が目指すべきものに近づくための1歩だと思う。すっきりしました」と話した。

 投げては最速150キロで、状況に合わせ巧みに変化球を操る。打ってはチャンスに強く、高校通算54本塁打を積み上げた。投打どちらも天性のセンスを持ち、「二刀流」とも言われたが、松本は「ピッチャーとしてやっていきたい」と明言した。打撃は好きだが「未練はないです」ときっぱり。投手としてやっていく強い決意を示した。

 夏の岩手県大会決勝の途中で右肘を痛め、そのまま甲子園へ。初戦東海大相模戦では激しい痛みをこらえながら3失点完投し勝利した。続く敦賀気比戦でも登板したが、2回2/3で10安打9失点と打ち込まれた。松本は「何とかなる、と思って投げたが、普通に考えたら無理でしたね」と振り返った。8月末に精密検査を受けた診察結果は右肘靱帯(じんたい)炎症。骨に異常はなく、2カ月投げずに安静にすれば治ると担当医に言われたという。「まず治すこと」と、今はグラウンドでランニングをこなすなどし、回復に努めている。

 「何がなんでも行きたい」とプロ選手になるために故郷神奈川を離れて2年半、岩手で努力を重ねた。現在、国内12球団すべてから調査書が届いており、上位指名は確実な状況だ。「楽しみです」と松本。夢がかなう瞬間を静かに待つ。【高場泉穂】

 ◆松本裕樹(まつもと・ゆうき)1996年(平8)4月14日、横浜市生まれ。南瀬谷小1年で軟式チーム南瀬谷ライオンズで野球を始める。南瀬谷中では瀬谷ボーイズに所属。盛岡大付では1年春からベンチ入り。12年夏甲子園でもメンバー入りし、13年春のセンバツでは安田学園戦に先発。14年夏甲子園では東海大相模戦で9回8安打3失点完投。敦賀気比戦で2回2/3、10安打9失点。高校通算54本塁打。183センチ、80キロ。右投げ左打ち。家族は両親、兄、弟。