選抜高校野球大会(22日開幕)の甲子園練習3日目が19日に行われ、史上初めてユニホーム姿の女子部員が甲子園に登場した。華陵(山口)の高松香奈子外野手(3年)で、部員47人中女性は1人だけ。ノックなどに加わることはできなかったが、ベンチでタイムキーパー役などを務めた。高松は「女子の公式戦出場を認めてもらいたい」という目標に向けて、第1歩をしるした。

 歴史的な「第1歩」は、偶然から生まれた。ベンチで守備練習を見ていた高松の方向に、ボールが転がってきた。「おーい、取ってくれ」と男子部員から声がかかる。全力で拾いに走ると芝生に立っていた。グラウンドに出てはいけない、と事前に通達されていた。それでも衝動を抑えきれず、甲子園の土をそっと踏んでみた。

 「サクッという、いい感触でした。甲子園はあこがれていた場所。声もすごく響いたし、気持ちよかった。華陵は全員野球なので、自分もプレーしている気持ちでした」。純白のユニホームを着た高松は笑顔を振りまいた。

 「お前は(甲子園練習で)プレーできない」。松下野球部長から聞かされたのは18日の夜だった。男子なら登録選手18人に入れなくても、打撃投手やノックの補助員などで参加が可能。だが、女子は大会だけでなく、公式行事への参加を禁止する規定があり、グラウンドにも立てない。「夜も泣いたし、朝も泣いてました」。大浪定之監督(47)に励まされ、ベンチでタイムキーパーとなった。

 小学2年で野球に出会い、3歳上の兄が華陵の野球部員だったことが、高校野球へのきっかけ。男子と同じ練習メニューをこなし、練習試合で守備につき、打席も経験した。「(禁止されている)公式戦出場を認めてほしくて、野球を始めた部分もある。きついことも、泣くようなこともあったけど、ここでプレーしたいという気持ちが、いっそう強くなりました」。開会式ではプラカードを持ち、5日目の慶応(神奈川)との初戦はアルプス席で応援する。帽子のつばには「叶えたい夢がある。叶えなきゃいけない夢がある」と記した。甲子園で女性部員がプレーする-。大きな夢への挑戦だ。【大池和幸】