<センバツ高校野球:履正社3-2下関商>◇23日◇2回戦

 履正社、1勝!

 第80回記念選抜高校野球大会2日目が23日、行われ、履正社(大阪)が甲子園初勝利を挙げた。エース三村庸平(3年)が完封目前の9回にソロ2発を浴びて追いつかれたが、10回裏の敵失でサヨナラ勝ちした。下関商(山口)は驚異的な粘りを見せながら、不運に泣いた。

 エースは勝って、泣いていた。2失点完投の三村は目をはらし「勝って泣いたりするのは相手に失礼なんですが」と言いながら、何度も声を詰まらせた。

 2点リードで迎えた9回、左腕は1イニングで2本の被弾。「自分の制球ミス…」とぼうぜんとした。だが延長10回2死二塁から、仮谷優人内野手(2年)の飛球を中堅手が落球。思いがけない幕切れに、ネクストバッターズサークルで飛び上がった。

 本当の感激は、そのあとだった。下関商の捕手、岡田亮太(3年)が、整列で握手を求めてきた。「泣きながら激励してくれた。ぼくはこれまで甲子園で勝って泣いてる人を見て、何でやろう?

 と思っていたけれど、今日その理由がわかりました」。

 「感激しています…」。岡田龍生監督(46)も感無量だった。86年に監督就任。野球部長も兼任し、97年夏の初出場時は、部長が決まるまで練習から応援団の手配まで1人でこなした。今では、95年センバツに神港学園(兵庫)の選手で出場した松平一彦部長(30)がサポート。9回の正念場でエース続投を決めたのは、同部長の「三村は大丈夫です」のひと言があったからだ。

 監督就任時は部員11人の小所帯だったが、今はプロ野球選手を輩出するまでになった。ナニワのゴジラこと岡田貴弘外野手(現オリックス)が主砲だった04年からは、強打も看板になった。だが不変の信条がある。「97年のチームは確実にバントを決めた、守りも堅かった。いつも監督が言われること」と、現チームの3番・吉川侑輝外野手(3年)は明かす。先制点は、4番山本優太捕手(3年)が狙ったスクイズが敵失を誘った。3失策に泣いた相手に対し、無失策で守りきった。【堀まどか】