<高校野球南北海道大会>◇21日◇決勝

 札幌一が7年ぶり2度目の夏甲子園出場を決めた。2年連続で進出した南北海道決勝で、北照を8-4で撃破。11安打を放ち、敵失や四死球にも乗じて序盤から小刻みに加点。2点差に迫られた後の8回には、4番松浦昌平捕手(3年)6番宮田優輝一塁手(3年)の2本の適時打で突き放し、北海に敗れた昨夏の雪辱を果たした。8月8日開幕の夢舞台では、甲子園初勝利を奪いに行く。

 大歓声に包まれ、左腕にグッと力を込めたエース掛端に、松浦捕手が抱きついた。ゲームセットの瞬間、札幌一ベンチから一目散に選手が飛び出す。マウンド付近で優勝校だけが許されるナンバーワンポーズ。目頭を熱くした菊池雄人監督(37)は「選手に感動。よくやってくれた」と漏らした。選手に「重てぇ~」と言われながら、84キロが3度宙を舞った。

 序盤から積極的な姿勢を貫いた。指示は「ファーストストライクから打とう」。投手と打者の1対1で気迫をぶつけた。初回に宮田の押し出し四球で先制すると、2回には敵失で加点。着実に点差を広げ「すごく大事な戦術」(菊池監督)という犠打を1死からでも徹底。北照に主導権を渡さなかった。

 2点差で迎えた8回には、怪力コンビの適時打でダメを押した。ベンチプレスMAX110キロの4番松浦が詰まりながらも中前に適時打。スクワットMAX205キロの6番宮田は「落ちろ思って走った」と、力で右中間に運ぶ適時二塁打。大きな追加点で、昨年、同じグラウンドに忘れた甲子園切符という忘れ物を手にした。

 昨夏の準Vメンバーが7人残った。坂本主将は20日の準決勝後まで、昨夏3年生だった先輩から「お前らが勝つとオレらも幸せだ」などの激励メールを受けた。「先輩たちも一緒に甲子園に行きましょう」と返信した約束を果たし「先輩たちの思いもあると思ったら絶対に負けられないと思った」と誇らしげに言った。

 昨夏の決勝後、新チームは頂点を狙う意気込みで船出した。だが、昨秋、今春と地区予選敗退を喫し、自信を喪失した状態に陥った。「精神的に焦ってバラバラになったけど、コミュニケーションを取って考えた」と宮田。松浦は「春までは勝手にふてくされたけど、周りを見ることができた」と笑った。雪辱を誓った夏、1つの目的に向かう集団が出来上がっていた。

 試合直前には「砂まき」の儀式を行った。ベンチ前で菊池監督が全選手に砂をかけた。「甲子園」と描かれた小瓶に入った、前回02年出場時の甲子園の土だった。準決勝まではバッテリー限定だったが、ベンチ入りメンバー18人にかけ、なくなった。スコアラーの大菅佑介マネジャー(3年)は「ちょうど補充できますね」とほほえんだ。

 さあ、次は甲子園1勝への挑戦が始まる。冬場の室内練習場では、延長10回に4-5で惜敗した02年の智弁和歌山戦のビデオを大音量で流し、モチベーションを上げてきた。菊池監督は「また挑戦させてもらえるので、あの1点の大きさ、意味を考えていきたい」と2度目の大舞台へ向けた。【村上秀明】