<高校野球長崎大会>◇22日◇準々決勝

 センバツを制した清峰・今村猛投手(3年)が泣いた。準々決勝で1-3と長崎日大に敗れた。最速152キロ右腕が今大会初失点し、味方打線も2点のビハインドを取り戻せず。春夏連覇への挑戦は断たれた。

 クールな怪物右腕今村も、こらえ切れなかった。涙が止まらなかった。「自分のせいで負けた。またみんなで甲子園に行こうと言っていたのに。申し訳ない」。仲間の顔を見ると、さらに涙があふれた。

 いつも通りのはずだった。1回、先頭打者の投ゴロを冷静にさばく。次打者を三振に打ち取りながら、振り逃げとなり走者を許す。これで歯車が狂った。3番に直球を左前にはじき返され一、三塁。4番には甘く入ったスライダーを左中間に運ばれ、2点を先制された。これが今夏初の失点。「調子は悪くなかった。自分の実力、力不足です」と自分を責めた。

 「センバツV腕」の看板は重かった。センバツでは、全5試合に先発し3完封。44イニングを投げ1失点。決勝では同じく超高校級の左腕菊池に投げ勝ち、長崎に春夏通じて初の優勝旗を持ち帰った。注目も、周囲の期待も高まった。「(重圧は)多少ありました」と、初めて、苦しかった胸の内を明かした。

 夏は5月に記録した152キロを封印し、制球とリズムを重視した。直球は140キロ台中盤。抜くところは抜き、要所を締める。連投に備え省エネ投球を意識した。すべては春夏連覇のため。だが、スタンドで第2試合を待つ波佐見の選手がポツリと漏らした。「いつもの今村じゃない。(球に)伸びがない…」。昨秋県大会決勝で敗れ、そのすごさを肌身で感じただけに、実感がこもっていた。

 今後の進路について「まだ考えられません。この経験を将来につなげたいです」とだけ話した。ただ、プロ入りの意思を固めている。その前に「まずは、夏休みにみんなで遊びたい。野球ばっかりやってきたので」と言った。クールな右腕は、最後の夏に泣いたが、その後にあどけない笑顔も見せた。【倉成孝史】