<高校野球岩手大会>◇24日◇決勝

 センバツの準優勝投手、花巻東・菊池雄星投手(3年)が春夏連続の甲子園をつかんだ。盛岡一との決勝は最速150キロをマーク、1点は失ったものの、無四球で毎回の13三振を奪い、2-1で勝利。自らスクイズを決め、決勝のホームも踏んだ。

 最後も冷静だった。9回2死。カウント2-1。菊池は両手を広げて胸を張ると、グラブとボールを胸元に戻して祈るようなポーズを取った。「ああいうことをすれば(打者が)直球で決めてくると思うじゃないですか」。投じた球はスライダーだ。詰まらせたゴロを自ら処理し、一塁へ。打者心理を惑わす作戦で最後のアウトを取り、ナインと歓喜の瞬間を迎えた。

 独り舞台だ。4回に連打で1点を先制される。菊池は「流れが相手に傾きかけたので、とにかく三振を取って勢いをつけたかった」とエンジンに点火。5回からテンポを上げると、1本の安打も許さない。7回無死二、三塁で打席に立つとスクイズを決めて同点。その際、一塁に豪快にヘッドスライディングした菊池は柏葉康貴二塁手(3年)の中前適時打で勝ち越しのホームも駆け抜けた。

 最速150キロ、毎回の13奪三振、無四球の好投。菊池は「このメンバーで、岩手のみなさんの前で野球をするのは最後になるんだという気持ちが強かった」と話し、高校最後となる故郷での試合でこん身の123球を披露した。

 夢を抱いた、親しみのある球場だ。小学4年生だった01年5月29日、岩手県営野球場で西武-オリックス戦が開催された。家族での観戦予定だったが、両親に急用が入って中止に。しかし菊池はあきらめきれず、たった1人で電車とバスを乗り継いで球場に向かった。そこで見たのが、プロ入り3年目の松坂大輔投手(現レッドソックス)だった。登板こそしなかったが、甲子園優勝投手の練習姿にくぎ付けになり、自らも聖地を目指す決心をした。

 日米7球団のスカウト、そして詰め掛けた岩手県民の前で再び全国制覇に挑戦する権利をつかんだ菊池。「球場やテレビで見て下さっている方を感動させるような、胸を熱くさせるようなピッチングをしたいと思います」。夏の聖地の主役の座も、独り占めにしてみせる。【由本裕貴】

 ◆花巻東

 1956年(昭31)創立の花巻商と、57年創立の谷村学院が82年に統合して発足した私立校。野球部は花巻商創立時に創部し、現部員87人。夏4回、春1回の甲子園出場。女子ソフトボール、陸上女子、水泳部も全国レベル。生徒数665人(女子256人)。主なOBに元近鉄の阿部成宏。所在地は花巻市松園町55の1。小田島順造校長。