2017年4月27日、ヤンキース田中将大はボストン・フェンウェイパークでのレッドソックス戦に先発し、9回97球を投げ3安打無四球で完封勝利を飾りました。


フェンウェイパークでの対ヤンキース戦となれば、当然ハンパない数のメディアが集まるので、カメラ席はあらかじめ球団から指定されています。一塁側(レッドソックスベンチ)は地元メディアのみ、三塁側(ヤンキースベンチ)は中継カメラが2台と、チャレンジ(ビデオ判定)時のMLBスタッフ待機場所となるので、それ以外に入っても3人程度。その残された三塁側席には日本の通信社と一塁側に入れなかった地元メディアが配置され、結局、私の席は一階スタンドの最後方…。フィールドははるか遠くかなたでした。


という訳で今回のミッションは「どんな状況下でも、へこんでいる場合じゃない、写真は場所じゃない、ネバってネバってええ写真を撮る!」(ながタイトルですみません)です。


ここからは600ミリの長玉レンズに1・4倍のテレコンバーターを付けてちょうどいい距離です。しかし不利なポジションでじっとしていても「ええ写真」は撮れません。そこで予定を変更して、持参した600ミリレンズ固定で狙うのではなく、機動力を生かして少し広めに撮れる400ミリに1.4倍のテレコンバーター付、70-200ミリのズームレンズとワイドレンズを駆使して(隠密に)動き回る事に。


フェンウェイパークは初回のみネット裏で撮影ができます。そこで1回はネット裏でピッチングや雰囲気ものを撮影、2回、3回は、最上階から撮り、4回には指定されたポジションに戻りました。


田中は回が進むにつれて調子を上げてきて、私の脳裏にも「敵地で完封」の文字が浮かび、興奮しながら一挙手一投足を逃すまいと撮っていました。


このスタジアムにはカメラマン特別ルールがあります。私的には『独自解釈』が出来る最高のスタジアムです。何か記録等がかかったりすると9回にネット裏で撮影ができる上に、試合後にはフィールドに入れるんです。マー君が敵地で完封勝利!独自解釈すると間違いなく記録、記録、記録なんです。間違いない。


そう自分に言い聞かせ、9回に私が選んだポジションは三塁側に近いネット裏の3列目。比較的小柄な観客が1列目と2列目に座っていたので、彼らに立たれても撮影には影響なし、と判断しました。しかもそこからだと試合後数分でフィールドにも入れます。


そして迎えた9回2死、最終打者ベニンテンディを二ゴロに仕留め完封勝利でゲームセット。ファインダー越しに、捕手と抱き合い、ナインや監督にタッチで迎えられる笑顔の田中の姿はとても微笑ましく、少しウルっとしながら連写しました。


その後、移動しようとすると、これも独自解釈? した地元の通信社も同じアングルで撮っている事に気付きました。やばい、同じような絵が世界に配信される。もうワンチャン欲しい。


よおし、試合後もまだまだ頑張って絵を作りますよー、と再度気合を入れ直しフィールドへ。


テレビ中継のインタビューに応じている田中を横目にウイニングボールの所在を確認します。チームスタッフにお願いして、インタビューを終えた田中にウイニングボールを渡してもらい撮影開始です。シャッターを押しながら「今日、めちゃくちゃかっこ良かったよ」と言うと田中は「今日もでしょ、今日も」と照れくさそうにそ笑いました。目線と表情をしっかりと頂いた「ええ写真」です。最後までネバって良かった。まぁ結果的に日本の他社のカメラマンも隣で撮っていたので、独自ものとは行かずに、翌日の日本のスポーツ紙で横並びとなりましたが、撮影中に本人と会話を交わし、しっかりと目線をもらった写真は「強い!」と1人悦に入ってしまいました。


MLBはまだゴタついているようですが、1日でも早く選手たちのええ表情を見たいもんです!【菅敏】(ニッカンスポーツ・コム/WBBコラム「カンビンの早く観たい撮りたい伝えたい」)