今季はメジャーでどんな記録が生まれるのか、気になる季節になってきた。節目の記録でいえば、エンゼルスのアルバート・プホルス内野手が通算600本塁打まであと9本、レンジャーズのエイドリアン・ベルトレ内野手が通算3000安打まであと58安打に迫るなど、大記録がいくつか達成されそうだ。

 3000安打といえば、マーリンズのイチロー外野手が昨年8月7日の敵地でのロッキーズ戦で日本人選手として初めて達成し、今季は通算3030安打でメジャー17年目のシーズンを迎える。歴代通算安打では25位にランクされ、このままいけば次に追い抜くのは同24位ロッド・カルー氏(元ツインズ内野手)の3053安打だ。

 現在71歳のカルー氏は1967年にデビューして新人王に輝き、1985年までメジャーで19年間プレーした。1年目から18年連続で球宴に選出され、首位打者には7度輝き、通算打率は3割2分8厘で歴代34位、1991年に野球殿堂入り。イチローと同じ右投げ左打ちで、2ケタ本塁打を記録したのは29歳と31歳のときに14本塁打をマークした2度のみだが全盛期には35盗塁以上を4度記録し、安打を量産しスピードもあるという点はイチローとよく似ている。カルー氏自身、昨年7月のESPN電子版のインタビューで「イチローは、現役時代の私と同じタイプの打者だ。彼も私も広角にヒットが打てる。彼は足があるので内野ゴロの間に走って安打を稼げるし、バントもできる」と、自分自身と重ね合わせて語っていた。ちょうど日米通算でピート・ローズ氏の持つメジャー最多安打記録4256を抜くときで「2つのリーグの記録を足すことによって、イチローをベストとすることはできない」と見解を述べていたが、選手としてのイチローには「大変尊敬している。メジャーに来て、こんな短期間で3000安打を達成するということが、彼の偉大さを物語っている」と称賛を惜しまない。そんなイチローが自身の記録を超えていくのを見るのは、感慨深いものがあるのではないだろうか。

 カルー氏は、昨年12月に18時間にも及ぶ心臓と腎臓移植の大手術を受けており、現在は療養中。イチローが昨季のペースで安打を打ち続ければ、カルー氏を追い抜くのは5月下旬だろうが、その頃にはカルー氏も回復し元気になられていることを願いたい。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)