今季メジャーの両リーグ交流戦はア・リーグ西地区とナ・リーグ東地区の対戦があるため、レンジャーズは9日(日本時間10日)から敵地でナショナルズとの3連戦が行われる。ナショナルズには15年までレンジャーズで投手コーチを務めたマイク・マダックス投手コーチがおり、ダルビッシュ有投手にとっては2年ぶりのかつてのコーチとの再会だ。

 レンジャーズでダルビッシュというエースを見てきた同コーチは、今は09年ドラフト全体1位指名でナショナルズに入団したエース右腕スティーブン・ストラスバーグを指導している。そのストラスバーグは今季、ダルビッシュの投球を映像で研究し、ダルビッシュと同じように常時セットポジションで投球するよう投球モーションを変えた。

 先日、マダックス・コーチに話を聞いたのだが、ストラスバーグにダルビッシュの投げ方を勧めたのは同コーチではないそうだが、そうしたいと言うストラスバーグに賛成し、後押しをしたという。

 「ワインドアップを使う投手でも、走者を背負ったとき、つまり、試合の中で重要な場面ではセットポジションを使うのだから、セットからの投球を極めるのは投手にとってプラスだ。投球時の繰り返し動作も安定する。私は、もっと多くの投手が常時セットポジションで投げるべきだと思う」とも話していた。

 ストラスバーグの現在の投球フォームは、映像で研究しただけあり、ダルビッシュのそれに似ている。

 もう6年ほど前のことになるが、まだメジャーに移籍する前のダルビッシュがテレビでストラスバーグの投球フォームについて語ったことがあった。「ストラスバーグの場合、体の力が違うんで、その分、腱(けん)とか関節に負担がすごくかかるんですよね。腕が伸びきった状態で、ひじだけで全て投げてるような、見てるだけで、ひじが痛くなってくる」と、故障を懸念していた。そのストラスバーグが時を経て、ダルビッシュのスタイルを倣って投球モーションを変えたのは面白い。同投手にとっては、常時セットポジションは体の負担を減らし故障を避ける目的が最も大きいそうだ。

 ただし、ストラスバーグのセットポジションはまだ改良の余地があると、マダックスコーチ。「ダルビッシュの投球動作は、ほぼ完璧に近い。投球モーションを正確に繰り返す作業は、どの投手よりも優れているし、頭をしっかり残して投げる。ストラスバーグは、その点がまだだね」と話していた。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)