ヤンキース田中将大
ヤンキース田中将大

投手と捕手。野球というスポーツの中でも独特の関係を持ち、試合でバッテリーを組むこのコンビにとって、同じ価値観を持つというのはやはり大事なことのようだ。

ヤンキースで7年目を迎える田中将大投手(31)の話を聞いて、そう思った。価値観といっても、人生とか日々の生活における価値観ではもちろんなく、投球における価値観だ。その価値観が同じならいいが、価値観が違うバッテリーというのもやはり存在するわけで、そうなると投手と捕手間で息が合わないという状態に陥るのだろう。

田中が口にしたのは、昨季までたびたびバッテリーを組んだオースティン・ロマイン捕手(31)のことだ。

「彼と組むのは楽しかったですし、すごく、価値観というか…。投球、配球に対する価値観というのは近いものがあった。すごく楽しかったなというのはあるので、組めないというのは残念ではありますけど」

昨年12月にFAでタイガースへ移籍したロマインについて、田中はそう振り返った。この6年間、バッテリーを組んだ39試合の成績は防御率2・77、被打率2割3分、被長打率3割8分8厘、被OPS6割5分2厘と優れていた。これまでゲーリー・サンチェスと61試合、ブライアン・マキャンと55試合、カイル・ヒガシオカと7試合、ジョン・マーフィーと5試合バッテリーを組んでいるが、2桁以上の試合数を組んでいる捕手の中では、ロマインと組んだ試合が成績的にも最も良かった。

筆者が一番印象に残っている田中-ロマインバッテリーの試合は、2017年4月27日の敵地ボストンでのレッドソックス戦だ。その試合で田中は相手エースのセールと投げ合い、9回を3安打に抑えわずか97球で完封するという、いわゆる「マダックス」を達成した。奪三振は3と多くはなかったが、無四球でテンポの良い投球。このとき現地で取材しており、大変な試合を目撃させてもらったという感覚になった。当時ヤンキース監督だったジョー・ジラルディ氏も、べた褒めだったのを覚えている。この試合の後、田中はバッテリーを組んだロマインについて「いいリードをしてくれましたよ。いいボールはどんどんコールしてくれますね。彼のボディランゲージもそうだし、乗せてくれるっていうところはありますね」と話していた。ロマインが試合後に何と言っていたかは残念ながら記録に残っていないのだが、映像を見返すと、試合終了の瞬間にマウンドの田中とがっちり抱き合い、笑顔で何か言葉をかけていた。ロマインにとっても、これが野球人生で最高かそれに近い試合だったのではないだろうか。

ヤンキース時代のロマイン
ヤンキース時代のロマイン