この5年くらい米球界で合言葉のように言われていることの1つに「球界最高の選手にはポストシーズンでプレーしてほしい」というのがある。球界最高選手というのはもちろん、エンゼルスの生え抜きスター、マイク・トラウト外野手(29)のことだ。

11年にデビューしたトラウトは、2年目の12年から8年連続でオールスターに選出されレギュラーシーズンでは14、16、19年と3度のMVPに輝いているが、ポストシーズンに進出した経験は14年の地区シリーズ3試合のみ。ロイヤルズを相手にストレート負けで敗退したシリーズで、トラウト自身も本塁打1本のみの12打数1安打に終わっている。

15年以降はチームも低迷が続き、ポストシーズン進出の機会はなし。選手の人気のバロメーターである昨オフから今季開幕までのユニホーム売り上げではトラウトが10位と期待されるほど上位にはきておらず、やはりポストシーズンでプレーしていないことがマイナスになっているのではないかと指摘するメディアもあった。売り上げトップ10のうち1、2位が昨季世界一のドジャースのベッツとベリンジャー両外野手、3位がパドレスのタティス内野手で、10人中8人が昨季ポストシーズンに進出したスター選手。トラウトより上にいる9位のユーティリティー選手キケ・ヘルナンデス(29=レッドソックス)も昨季はドジャースに所属しているが、スター性ではトラウトにははるかに及ばないことを考えると、かなり衝撃的だった。

しかし今季は、これまでと違うシーズンになるかもしれない。二刀流の大谷翔平投手(26)も体調万全で投打に才能を発揮し、チームも開幕から上々のスタートを切った。今度こそポストシーズン進出かと期待も膨らむ。トラウト自身も、開幕日のジ・アスレチックのインタビューで「ポストシーズンから遠ざかってから、あまりにも長い年月がたってしまった。毎年春になると必ず、トラウトはいつポストシーズンに行くのか、という話題が持ち上がってきたよね。いつだと思う? 今がその時だよ」と話していた。

今季こそという思いは相当強そうだ。大谷の二刀流復活も、兄貴分として喜んでいるだろう。先日、ヤンキースのエース右腕ゲリット・コール(30)が、面白いエピソードを話していた。「以前(エンゼルス戦で)トラウトが僕のところにきて、大谷の打撃練習を見てみろと言ってきた。それでこっそり見にいったら、フィールドのあらゆる方向へ飛ばしていて感銘を受けたよ」という。トラウトの良き兄貴ぶりを感じさせる、いいエピソードだと思う。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)