エンゼルス大谷翔平投手(27)が3年ぶりに日本で開いた会見に行ってきた。

印象に残ったことは数多くあったが、その中の1つは次の言葉だった。

「毎年、状態が良くても悪くても、少なからず微調整は続けていくので。ピッチングに関しても、バッティングに関しても。今年、調子がいい時でも、微調整を繰り返しながら、ちょっとずつ良くなるというのが多かったかなと思います」

常に変わり続けていくことは、メジャーという舞台で高いレベルを維持していくために必要不可欠なことだと、改めて実感させられた。大谷は以前にも「(メジャーは)年々レベルが上がっていく」というようなことを話していたこともあった。そんな世界でやっていくには、変わり続けることが当たり前なのだ。

これまで取材させてもらった選手も同じだった。ヤンキースを取材することが多かったので、黒田博樹投手や田中将大投手を近くで見てきたが、やはり変化や進化を続けることを当たり前のようにやっていた。田中は毎シーズンのように新しいことに挑み、配球はもちろん、投球モーションや投球時のプレートの位置取りまで、大胆に変えることがあった。

メジャーは変化の激しいリーグだ。打撃にしろ投球にしろ、トレンドもどんどん変わっていく。例えば2019年頃はシンカーを投げる投手が激減し「シンカーは死んだ」とまで言われたが、最近は復活しつつある。

打撃では、フライボール革命が起こり打球に角度をつけて飛ばす打撃が主流になったが、その一方でコンタクトを重視する打撃の流れもきている。今季48本塁打で本塁打王となりア・リーグのハンク・アーロン賞に輝いたブルージェイズのウラジーミル・ゲレロ内野手(22)は、先日の受賞の際に、打球を上げるのではなくレベルスイングでラインドライブを打つことを心掛けていると話していた。これは、誰も彼もが打球を上げるようになった昨今のメジャーに、一石を投じる発言だ。

今季は初球から打ちにいく打者が目立ち、数年前と比べて全体的に初球を振る割合が増加するという傾向も出ている。深いカウントまで粘ることが尊ばれた時代から、アグレッシブに打っていく時代に変化している。

こうして目まぐるしく変わっていくMLBという世界では、変わっていかなければ進歩がないどころか、取り残されてしまう。第一線で活躍している大谷だからこそ、それが身に染みているのだろう。

何とも大変で厳しい世界だ。だが大谷はその中で、実に楽しそうに、やりがいを感じながらプレーしていることが伝わってくる。そこにかえってすごみを感じる。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)