エンゼルス大谷翔平投手(27)の受賞ラッシュとなったMLBの各賞も、29日(日本時間30日)の最優秀DH発表でほぼ終了する。この数週間は、まるでお祭りのようなにぎわいだった。

クライマックスは何といっても、全米記者協会(BBWAA)が選出するMVPだった。米メディアではシーズン終了前から、大谷はMVP確実だと唱える野球ジャーナリストが多く、受賞当たり前のムードが漂っていたが、あまりに予想通り過ぎる受賞というのは、果たして盛り上がるのだろうか。盛り上がるとしたら、どんなふうになるのだろうかと、筆者個人的には期待と不安が入り交じった状態で当日を迎えていた。

ふたを開けてみると、想像を超えた盛り上がりだった。史上19人目の満票での選出ということがその受賞の価値を一層高めていたという面ももちろんあったが、米国の各スポーツメディアのSNSによる祝福ぶりが華やかで凝りに凝っており、想像を超えていた。MLB公式はもちろんのこと、ESPN、スポーツイラストレイテッド誌などの主要スポーツメディアがそれぞれのツイッター公式アカウントで、オリジナルのイラストやGIFにメッセージを添えてMVP受賞を祝福した。

ESPNは、日本人でMVP初受賞を果たした現役時代のマリナーズのイチロー外野手と大谷のツーショットをイラスト化し「ショウヘイ・オオタニが、少年時代のヒーローであるイチローとMVP仲間となった」と祝福。ESPNの名物ニュース番組「スポーツセンター」の公式では「MVP大谷翔平」と日本語で名前を入れ投打二刀流の大谷のイラストGIFで祝った。ジ・アスレチック公式は、日本人アーティストのヨシダ・ケンタロウ氏を起用して大谷のイラストを制作して祝福していたが、そこには大谷の誕生月である7月の花「ハス」を描き、文字は浮世絵の画法を取り入れるというこだわりが詰まった作品になっていた。

これらはすべて受賞発表直後にツイッターに投稿されたが、どれも瞬時にできるレベルのものではなく、前もって企画を練り、準備していたことは明らかだ。趣向を凝らした祝福からは、大谷へのリスペクトが感じられた。

これで思い出したのは、ヤンキースのレジェンドであるデレク・ジーター氏(47)が2014年に引退した時のことだ。同氏の背番号「2」と「リスペクト」をもじった「Re2pect」という造語が作られ、メディアもファンもすべての人がその素晴らしいキャリアを祝福したのを思い出す。リスペクトの気持ちを込めて選手を祝うときというのは、球界全体がまとまり、優しい空気で満ちるような感覚がある。今回の大谷MVP受賞のときも、それに似た空気を感じた。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)

2014年9月25日 本拠地最後の試合を終え、記者に質問に答えるヤンキース・デレク・ジーター
2014年9月25日 本拠地最後の試合を終え、記者に質問に答えるヤンキース・デレク・ジーター