これほど苦悩するトラウトを見たのは、これまで記憶にない。

エンゼルスのマイク・トラウト外野手(30)は、どんな状況であっても常に安定した選手だった。メジャーのキャリアを通して下位に低迷するチームでプレーすることがほとんどだったが、それでも常にトップレベルの活躍を続け、MVPに3度輝いた。何があっても動じずに安定し続けたからこそ、これだけの実績を残してきたと思う。

しかし、このところのトラウトは何かおかしい。7月1、2日の敵地でのアストロズ戦では、2試合で7打席連続三振。2試合連続で1度も出塁することなく3三振以上を記録したのはメジャーで自身初めてのことだった。その翌日も4打数無安打で、アストロズとの3連戦は11打数無安打、9三振とボロボロ。かつて同僚だったアストロズの捕手マーティン・マルドナド(35)も「あんなに三振するトラウトを見たことがない。ショックだ」と言うほどだった。

その数日前には、試合中のトラウトの様子に驚かされた。4-11の大敗を喫した6月28日のホワイトソックス戦で、2点を追う7回に救援右腕ペゲロが2四球と2連打で1死も奪えず4点を献上し降板したときのことだ。中堅を守っていたトラウトは、ペゲロの投球フォームの癖があまりにはっきりと出ていると、試合中にフォームをまねるジェスチャーをしながら、うんざりした顔をしていた。それが中継のテレビカメラでとらえられ話題になっていたのだが、あんな表情のトラウトを見るのも初めてだ。

今季のエンゼルスは開幕で好スタートを切り、今度こそポストシーズン進出かと期待が高まったが、5月中旬頃から失速。マドン監督が解任され、後を引き継いだネビン監督代行はマリナーズ戦での大乱闘により10試合の出場停止処分を受けるなど、ごたごたが続いた。米メディアからはチームにてこ入れが必要だと指摘する声も出てきており、米スポーティング・ニューズ誌電子版は「エンゼルスはチームを立て直すためにマイク・トラウトかショウヘイ・オオタニをトレードに出すべきかもしれない」と書いていた。トラウトは7月5日付の地元紙オレンジカウンティー・レジスターで「僕はこのチームと契約したわけで、僕がプレーしたいのはこのチーム。僕がトレードされることを望んでいるとか、いろいろなことを言われている。もちろん勝ちたい。それは周知の通りだ。まだ巻き返す時間はある」と語っている。チームが再浮上しない限り、看板選手の行く末には今後も臆測が飛び交いそうだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「水次祥子のMLBなう」)