約2年のブランクはやはり相当なものだった。エンゼルス大谷翔平投手(26)が7月7日(日本時間8日)、紅白戦に先発した。実戦登板は1年10カ月、674日ぶり。ボールを制御できず四球を連発した。「思い切り投げにいってはいない」と全力ではなかったものの、フォームに躍動感がなかった。100マイル(約161キロ)を連発していた手術前の迫力ある姿とは、程遠かった。

18年6月6日のロイヤルズ戦後、右肘の内側側副靱帯(じんたい)に損傷が発覚した。その後、PRP(プレートレット・リッチ・プラズマ=多血小板血漿)注射で一時的に手術を回避。9月2日のアストロズ戦で復帰登板を果たしたが、結局は18年10月1日にトミー・ジョン手術を行い、右肘に初めてメスを入れた。

実戦勘。打者との駆け引き。メンタルのコントロール。試合でしか鍛錬できない“技術”から約2年間も遠ざかった。それを、開幕までの約2週間でメジャーレベルにまで上げられるのか。大谷の登板翌日にマドン監督は「今は我慢の時。昨日の投球は納得のいくものではなかったかもしれないが、健康な状態で投げられたし、リズムもつかんだ。開幕が近づくにつれて、よりいい状態になっていくだろう」と強調。時間がかかることは想定内だった。

紅白戦の1イニング目、大谷は小走りでベンチを出て、歩いてマウンドに上がった。投球練習を10球行った後、内野手からボールを受け取った。グラウンドを見渡し、上空を少し見上げた。球が荒れ、天を仰ぐこともあったが、ベンチに戻る際には笑顔も見せた。問題なく投げられた安心感とともに、久しく感じていなかった試合の雰囲気に、懐かしさもあっただろう。

60試合の短縮シーズンで、開幕から投打二刀流での活躍を期待される。「飛ばせるだけ飛ばして、両方しっかり頑張りたい」と100%の状態で臨む覚悟もある。とはいえ、残り約2週間で時間は十分とは言えない。現状を踏まえると、イメージ通りにはいかないかもしれない。

周囲の懐疑的な声を幾度となく黙らせてきた大谷が、どう修正して開幕を迎えるのか。次回以降の登板の見どころとなる。(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」)