ア・リーグ西地区の首位を独走するアストロズ。9日(日本時間10日)の試合前、大高大五郎内野守備コーチ(24)が、投球練習を終えたエンゼルス大谷翔平投手(28)とあいさつを交わした。2人に面識はなく、仲介役はアストロズの主砲ヨーダン・アルバレス外野手(25)。大高コーチは「アルバレスが『ちょっと友達いるから会って』っていう感じで。初めて会いました」と笑顔で明かした。

“期間限定”で偶然が重なった。通常はルーキーリーグで内野の守備を中心に選手の育成を担当しているが、急きょメジャーのチームから声がかかった。アストロズのベンチコーチが個人の事情でプエルトリコに一時帰国。すると7日(同8日)のレンジャーズ戦から、大高コーチが一時的に内野守備の担当に抜てきされた。次週から通常業務に戻るため、わずかな臨時コーチ期間だったが、その間にエンゼルス戦が重なり、大谷に遭遇。たまたま、外野エリアでア軍のフリー打撃の球拾いをしていた最中の初対面に「日本でも、アメリカでもトップですごい。かっこいいです」と、うれしそうだった。

もっとも、ルーキーリーグからメジャーに推薦してくれた人物は、歴代9位の通算2076勝を誇るア軍のダスティ・ベーカー監督(73)だった。「マイナーリーグの春キャンプで少し話して、覚えてもらったのかなと思います」。今春、労使協定に関するMLB機構と選手会の交渉が停滞し、キャンプが1カ月遅れた。だが、マイナーでは既にキャンプが始まっており、その間にベーカー監督の目に留まったようだ。予期せぬ事態で起きた偶然も、大高コーチの期間限定メジャー昇格の道になった。

日本で生まれ、5歳の時からアメリカに住み始めた。名門私立イエール大学とジョンズ・ホプキンズ大学で野球をプレーし、昨年6月からマイナーのコーチになった。プロ経験はゼロ。それでも「他球団ではプロ経験がないと難しいですけど、アストロズはプロ経験がなくても、アイデアが良かったり、コーチとしていいと思われれば入れる」と明かした。大学時代からツイッターで動画を引用しながら、内野手の動きのポイントなどを投稿。これが、アストロズに採用されるきっかけにもなった。夢は「メジャーでベンチコーチになること」。少ないチャンスをものにし、確実に夢に近づく姿が頼もしかった。【MLB担当・斎藤庸裕】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」)