ここ数年、開幕前にシーズン終了後の引退を公言し、1年間で各球場を回ってファンに感謝を伝えるという例が増えている。

14年のデレク・ジーター(ヤンキース)あたりから一般的になり、昨年はアルバート・プホルス(カージナルス)、今年はミゲル・カブレラ(タイガース)といった名選手が、全米各球場でねぎらいのスタンディングオベーションを受けた。

各球団が、特色のあるプレゼントを贈ることもブームになっている。「最後の3冠王」であるカブレラは9月21日、アスレチックスの本拠地オークランドで相手のコッツェー監督からボトルワインを受け取った。オークランドのあるカリフォルニア州はワインの産地として有名だ。しかし、配慮不足と批判を受ける事態となった。

カブレラは09年、深酒して朝帰りした自宅で夫婦げんかし、警察が出動。地区優勝争い真っ最中のチームに水を差した。その後、アルコール依存症の治療を受けた。3冠王を獲得した12年には、地区優勝を決めた際、チームがノンアルコールのシャンパンを用意するほど、酒とミギー(カブレラの愛称)の組み合わせには慎重になっていた。USAトゥデー紙によると、アスレチックス以外にも、アストロズがベーカー監督の所有するワイナリーのワインとカウボーイハット、マーリンズもラム酒と葉巻を贈っていた。

しゃれたものだと、サーフィンの本場ロサンゼルスのエンゼルスは、MLBの実績を入れたサーフボードをプレゼントした。ロックンロールの殿堂が建つクリーブランドにあるガーディアンズは、ギターを贈った。ニューヨークにあるヤンキースは、サイン入りの地下鉄の看板、リベラから本塁打を打った絵を贈った上に、カブレラの基金への1万ドル(約145万円)の寄付を行った。

過去には、チッパー・ジョーンズ(ブレーブス)が、ビールの本場ミルウォーキーに本拠地を置き、試合中に着ぐるみのソーセージレースが行われるブルワーズから1年分のソーセージを贈られた。マリアノ・リベラ(ヤンキース)は、ツインズから、何年もかけてカットボールで折ったバットで作られたイスを受け取った。日本でも、このような地域ごとに工夫を凝らした習慣が根付けば面白そうだ。【斎藤直樹】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「斎藤直樹のメジャーよもやま話」)