メジャーリーガーになっても、日本人らしさは残るものだなと感じた。ここで言う「日本人らしさ」とは、浪花節的な義理人情を大切にしたり、真面目に、勤勉に、周囲の期待に応えようと努力することだ。

ツインズからFAとなった前田健太投手(35)が、タイガースに2年契約で移籍した。移籍先を選んだ理由を「最初にオファーをくれたチームがタイガースでした。その気持ちが嬉しく選ばせていただきました」とSNSに記した。

契約総額は2年で総額2400万ドル(約36億円)。早期決着となったが、もっと粘れば好条件を引き出せたかもしれないが、タ軍の誠意に応えた。24年は球団の「タイガース基金」に7万ドル(約1050万円)、25年は5万ドル(約750万円)を寄付する。最初から寄付が入っている契約も珍しい。

広島からポスティングで移籍した8年前、ドジャースと異例の契約を結んだ。右肘の不安を指摘され、契約金100万ドル、年俸は300万ドルで8年契約。合計しても2500万ドル(約37億5000万円)だった。その代わりに出来高が毎年1015万ドル(約15億2000万円)ついた。これには「球団に有利過ぎる」という批判も起きていた。今回は初めてのFA。どんな契約でも選べる中で、寄付付きの契約を選んだ。

パドレスのダルビッシュ有投手(37)は8月31日、検査で右肘に骨棘(こっきょく)があることが判明した際、シーズン中の復帰を目指すと語った。「パドレスからお金をいただいてますし、帰ってくる可能性があるのなら。もちろん、ダメだったら投げちゃダメだけど、いろんな人へのリスペクトもありますし」。この時点でチームは借金10で、プレーオフ進出圏内まで7・5ゲーム差となっていた。6月には28年まで6年間の契約延長にも合意済みだった。今年に集中して、絶対に結果を出さなければいけないという立場ではない。一般的なMLB選手なら、翌年に向けて割り切ってもおかしくない状況だった。

リハビリを続けたが結局、9月12日にはシーズン中の復帰を断念した。「フラストレーションはある。自分の仕事をしないでお金をいただいていることは日々苦しいし、嫌だが、けがで投げられないことは仕方のない。今、自分ができるのは治癒するのにベストな選択、治療、運動をしていくこと」。職業倫理と今季絶望の葛藤が、言葉に表れていた。

今オフは、大谷翔平(29=エンゼルスFA)の移籍先に注目が集まっている。史上最高額での契約が予想されているが、大谷自身は契約金額の多寡を気にしないのではと思う。あまりに相場から離れた条件の球団と契約すると、MLB選手会から注文がつく可能性はある。それでも、気持ちに素直に従った「日本人らしい」選択をするのではと、予想している。【斎藤直樹】

(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「斎藤直樹のメジャーよもやま話」)