メジャーのキャンプに先駆けて2月1日、アリゾナ州ピオリアで日本ハムのキャンプが始まりました。初日のグラウンドには、日本からのツアーで訪れた熱心なファンに交じり、メジャー各球団のスカウトの姿も数多く見られました。昨季108年ぶりに世界一となったカブスをはじめ、レッドソックス、ドジャース、レンジャーズなど、日本となじみの深い球団の関係者が集結しました。もちろん、お目当ては大谷翔平クン。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)直前の仕上がりを見るだけでなく、今オフにもメジャー移籍の可能性が確実視されるだけに、徹底マークを続けているというわけです。

 大谷への注目度の高さは、いまさら言うまでもありません。昨年2月の同キャンプでは、オープン戦の登板時には複数のGMをはじめ100人以上のメジャー関係者がネット裏にズラリと陣取り、大谷の動きをチェックしました。当初は投手としての評価が先行していましたが、現在では打者としての評価も「◎」。メジャーでも「二刀流」を生かせるか否か、が獲得へのカギを握っており、シーズン中もほぼ全球団がアジア担当スカウトらを日本へ送り込み、その動向を見守ってきました。

 今回、故障のため、大谷のWBC出場は正式に見送られました。大谷本人をはじめ、侍ジャパン、日本のファンにとっては極めて残念な事態となってしまいましたが、メジャーのスカウト陣の感覚は少しばかり異なっていました。各国がベストメンバーで挑む真剣勝負を期待する一方で、今オフに獲得を目指すメジャー球団が、最重要視するのは大谷のコンディション。寒い春先に無理をして故障が悪化するような事態は絶対に避けてほしい、というのが本音なのです。実際、ある球団のスカウトは「彼がすばらしい才能を持っていることは、もはや誰もが分かっている。100%の状態でないのであれば、出場しないことは理にかなっている」と、欠場をマイナスにはとらえていません。さらに「シーズン終盤にどんな状態になっているかを見守っていきたい」と、中長期的な視線で大谷を見つめています。

 大谷はすでに「日本の宝」と言われていますが、今やメジャー関係者の中でも特別な存在です。メジャー移籍後、将来的に「世界の宝」となるためにも、今回の決断を尊重しつつ、1日も早い完全回復を願いたいものです。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)