「会長付特別補佐」という、何とも重苦しい肩書になったイチローですが、千両役者ぶりは相変わらずでした。

今季最後のアナハイム遠征となったエンゼルス4連戦で、44歳のイチローが24歳の大谷に連勝しました。といっても、選手登録から外れ、ベンチにも入れないイチローに対し、投手としてのプレーを中断している大谷が、直接対決するはずもありません。

ハッキリ言ってしまえば、どうでもいいことなのですが、試合前のフリー打撃での柵越えの本数を、失礼を承知ながら勝手に「勝負」として観察させて頂いた次第です。

まず、13日の第1ラウンドは、先攻の大谷が6本だったのに対し、後攻のイチローは3連発を含む11本で圧勝しました。翌14日の第2ラウンドでも、イチローは持ち前の長打力を存分に発揮して10本を記録。6本にとどまった大谷に快勝しました。

飛距離や打球スピードこそ大谷に譲りますが、イチローの打球に角度を付ける技術力、確実性は、やはり天下一品です。スタンドのファンの視線がくぎ付けになり、感嘆の声が漏れる光景は、重苦しい肩書を背負う以前とまったく変わっていません。

今回の「勝敗」の結果を聞かされたイチローは「まあ、そうやって遊んでてくださいよ」。にこやかに笑うばかりでした。

5月3日に肩書が変わって以来、試合にこそ出場していませんが、イチロー自身は日々のルーティンを変えていません。試合中は、ダッグアウト裏に設置してある初動負荷マシンで体を動かし、ストレッチ、打撃練習を行っています。休日や移動日でも、球場で黙々とトレーニングを繰り返す行動パターンは同じです。変わったことといえば、若い選手が頻繁にアドバイスを求めてくるようになったことぐらい。その場合は、会長付特別補佐として「指導」しているそうです。

来季以降、イチローの処遇は定まっていません。現時点では、来年3月、日本で行われる開幕戦「マリナーズ-アスレチックス」で来日することが有力視されています。

大谷に快勝したフリー打撃を見る限り、イチローが公言してきた「最低50歳まで現役」は、決して絵空事ではないような気もします。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)