マリナーズ入りが決まった菊池雄星投手(27)が3日(日本時間4日)、本拠地シアトルで入団会見を行いました。とりわけ注目を集め、「つかみはOK」との印象を与えたのが、50人を超える日米報道陣の前での英語会見でした。

冒頭、「Hi everyone」で始まり、名前を名乗った自己紹介は、ある意味で想定内でした。ところが、菊池は台本を見ることもなく、家族、関係者、マリナーズ関係者、さらに新しいチームメートへのメッセージなどを、文字通りサラサラと英語で伝えました。ここまでなら、あらかじめ準備して記憶していれば、何とか可能なのかもしれません。

ただ、そこからが驚きでした。米国人記者の質問に対し、菊池はひと言ずつうなずいていました。通訳が正確な意味を訳していたこともあり、日本語で話すと思いきや、菊池はほぼ考え込む間もなく、すぐに英語で応答し始めました。もちろん、国会の政治家の答弁ように、あらかじめ閣僚が作成した「想定問答」が用意されているわけではありません。1問だけ「英語で説明するのが難しいので日本語でもいいですか」と断ったうえで、通訳の力を借りましたが、まさに「アッパレ」の会見でした。

個人差があるとはいえ、長年、メジャーでプレーをしている選手の場合、年月を重ねるにつれ、日常会話ではほぼ通訳なしでコミュニケーションを取れるようになっています。たとえば、イチローの場合、英語だけでなく、スペイン語でもある程度の会話はできていると言われています。ダルビッシュにしても、発音を含め、ほぼ不自由なく、日常会話をこなしています。それでも、いわゆる公式会見などでは、通訳を介しています。というのも、繊細なテーマなどに関して、細かいニュアンスを、誤解なく、より正確に伝えるため、バイリンガルの通訳を通して、メディアに対してコメントを残しています。

雑談、あいさつなどは別として、それぞれ状況次第で通訳を介することが必要になる場合もあると思います。その一方で、今回の菊池の「ガチンコ会見」は、かなりのチャレンジだったでしょうが、米国人側には「大ウケ」でした。多国籍、多人種が居住する米国社会では、必ずしも文法的に正しい英語を話す人ばかりではありません。

多少、言葉足らずだったり、たどたどしくとも、英語で対応するという、難解なことにチャレンジした菊池の姿勢と人間性が、何よりも共感を呼んだような気がします。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)

マリナーズのユニホームに袖を通し、ディポトGM(左)、代理人のボラス氏(右)と記念写真に納まる菊池雄星(撮影・菅敏=2019年1月3日)
マリナーズのユニホームに袖を通し、ディポトGM(左)、代理人のボラス氏(右)と記念写真に納まる菊池雄星(撮影・菅敏=2019年1月3日)