キャンプインをし、Vサインを作りマリナーズの同僚と話す菊池雄星(右)(撮影・菅敏=2019年2月12日)
キャンプインをし、Vサインを作りマリナーズの同僚と話す菊池雄星(右)(撮影・菅敏=2019年2月12日)

マリナーズ菊池雄星投手(27)の初めてのキャンプが始まりました。岩手・花巻東高時代からメジャーを目標にしていただけに、米国流の投球メカニック、生活習慣だけでなく、英会話を勉強するなど、多岐にわたり、周到な準備を進めた結果、ようやくスタートラインに立ちました。

野球選手である限り、フィジカル面を万全にすることが最優先なのは言うまでもありません。その一方で、メンタル面や思考法の順応も、重要な要素になってきます。菊池の場合、日本で培った技量と、米国レベルとの違いを認識しつつ、冷静に受け入れようとする姿勢が垣間見えます。その一端が、近年の米国で主流となりつつあるデータ重視へのアプローチです。

キャンプ2日目。初めてブルペンに入った際、菊池と捕手の背後には、最先端機器「ラプソード」が設置されていました。同機器は、1球ごとに球速、回転数、変化球の軌道軸などが計測できる「優れもの」で、近年、メジャー各球団が一斉に導入するようになりました。ザックリ言えば、これまで速球の「伸び」や変化球の「キレ」と表現されていた曖昧な部分が、数字としてはじき出されるような印象でしょうか。そんな細かい数字を、菊池はいい意味で、客観的に見ていました。

「データは自分も好きで意識してやってるんですけど、積み重ねることで意味が出てくるのかなと思うので、今のスプリングトレーニング中とシーズン中とかを比べながら、自分では気付かないところを教えてくれるツールかなと思ってます」。

つまり、単純に高水準の数字だけを追い求めるわけではなく、「好不調」を計るバロメーターの一部として考えているのでしょう。たとえ、データ上では高い数字を残しても、少しでも自分の感覚に違和感があれば、必ずしも好結果に結び付くとは限りません。実際、メジャーでは時速160キロ前後の快速球が、瞬時にして本塁打になる光景も珍しくありません。

近い将来、野球の「科学化」「データ化」が、さらに細分化され、発展する可能性は高いでしょう。ただ、グラウンド上の野球は、テレビゲームとは大きく異なります。生身の投手と打者が対決する限り、雌雄を決するうえで、微細な駆け引きやそれまでの経験則が、重要な要素として存在するはずです。菊池の言葉通り、そこにはデータを含めた「積み重ね」のキーワードも見逃せないでしょう。

「ブルペンで毎日チェックして、もう少しこうすればもっと曲がるんじゃないかとか、改善できるんじゃないかとか、確認できるというのは大きいなと思います」。

データや数字と戦うのではなく、いかに有効に活用するか-。

滑るメジャー球、硬いマウンドだけでなく、細分化される膨大なデータへのアプローチを見る限り、菊池はすでに米球界に順応しているような気がします。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)

キャンプインし、ユニホーム姿でキャッチボールをする菊池雄星(撮影・菅敏=2019年2月12日)
キャンプインし、ユニホーム姿でキャッチボールをする菊池雄星(撮影・菅敏=2019年2月12日)