欧州初となるメジャーの公式戦「レッドソックス-ヤンキース」の2連戦が、ロンドンで開催されました。2日間に詰め掛けた観衆は、計11万8718人。21カ国から613人の報道陣が取材に訪れ、194カ国及び地域にテレビ放送されました。

ロンドン五輪のメイン会場を改装したスタジアムは、なかなか立派な野球場に変身していました。選手の登場曲をはじめ、BGM、イニング間のアトラクションなども、すべてメジャー流の演出でした。ヤンキースタジアムの「YMCA」、フェンウェイパークの「スイート・キャロライン」を同じ球場で耳にしたのは、もちろん初めての経験でした。7回裏の「ボールパークへ連れていって」の合唱にいたっては、地元ファンに知られていない可能性が高いこともあり、あらかじめボランティア数百人に事前レッスンを行い、誘導役として仕込んでいたほどでした。

また、通常、サッカーの試合の際にはフーリガン対策のためアルコール類は販売されていないそうですが、全面的に「解禁」。英国の紳士、淑女もこの日ばかりは、ビールを両手に抱え、普段はお目にかかれないホットドッグやポップコーンをほお張るなど、米国のボールパークの雰囲気を満喫したようです。

開催を推進してきたコミッショナーのロブ・マンフレッド氏は、開催の成功にすっかり満足そうな表情でした。「多くの国でテレビ放送され、ファンを引き込むこと。さらに選手を育成していくこと。この両面で発展していければいいと思う」。すでに、来季もロンドンで「カブス-カージナルス」を開催することが決定。2021年以降は、他の欧州都市も選択肢に入れながら選手会などと折衝していく考えを明かしています。

ただ、球場に足を運ばなかった大多数の英国人の目に、メジャーの野球がどう映ったかは、今のところ定かではありません。

2連戦が終了した翌日の地元紙「ザ・デーリー・テレグラフ」のスポーツ面は、1~5面が同地で開催中のクリケットW杯の記事で埋め尽くされていました。その後、5ページはテニスのウィンブルドン特集。続く4ページは、女子サッカーのW杯と男子サッカー。その後の2ページはモータースポーツのF1。MLBの記事がようやく登場したのは、全24ページ中の18ページ目でした。

今後、どのような形で欧州に野球が浸透し、発展していくのかは分かりません。その一方で、MLBは7月2日、インド・ニューデリーにオフィスを新設することを発表。同地で少年少女の育成プログラムを進める方針を明かしています。競技人口、そして市場を拡大しようとするMLBの「攻め」の姿勢は、当分、継続されそうです。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)