エンゼルス大谷翔平が、かなり悩んでいます。

3日(日本時間4日)のアスレチックス戦で適時二塁打を放ちましたが、その直前までは自己ワーストタイの15打席連続無安打(1四球を含む)。4日には3番から5番に打順を下げ、3打数無安打3三振。翌5日は休養のため、スタメンから外れました。同日終了時点で、本塁打は8月唯一のアーチとなった同18日以来、遠ざかっています。

つい2週間前の8月20日までは11試合連続安打をマークし、その間、計21安打を量産。打率を3割7厘まで引き上げるなど、およそスランプとは無縁のような成績を残していました。ところが、突然、急降下するのですから、「打撃は水もの」と言われるのもうなずけます。

大谷といえば、常日頃、淡々と客観的な視点で話すような印象なのですが、3日の試合後は、いつもと同じような口調ながら、よりストレートに苦しい胸の内を明かしました。

「そんなにポジティブでもないです。打てないと打席に行くのも嫌になりますし、みんなそうじゃないかなと思いますけどね。不安があって行く打席もあるし、調子がいい時というのは早く行きたいなと、やりたいことができている時なので、そう思うのは普通じゃないかなと思います」。

好結果が出ないばかりか、納得のいかない凡打が続き、目の前にモヤがかかったような日々。当然、誰しもへこむはずです。ただ、「野球の申し子」とも言える、異次元レベルの大谷なら…と勝手にイメージしていましたが、あらためて考えれば、ユニホームを脱いだ素顔は25歳の青年です。弱気とも映る一面をのぞかせた本音は、ある意味で人間臭く、新鮮でした。

かつて、不振に陥った際のイチローは、厳しい表情を崩すことなく、ピリピリとした、近寄りがたいオーラを発していました。いつもは柔和な松井秀喜は、好機で凡打するたびに顔をしかめ、文字通り唇を一文字にかみしめていました。両手のマメが破れても黙々とバットを振り続ける福留孝介(現阪神)、真夜中まで映像を撮影しながら素振りを繰り返す青木宣親(現ヤクルト)…。偉大なバットマンたちは、何度となく高い壁にぶつかりつつ、必死にもがいた末、自力で乗り越えてきました。

天賦の才に恵まれた一方で、大谷は今、あらためて打撃の難しさと向き合っているのでしょう。不振の中にいながらも、大谷の口調には、いつもと変わらない、冷静な客観性が含まれていたような気がします。

「原因はある程度分かっている中で、分かっているのと直せるのはまた違う。意識して直せるのか、そうじゃないのかも違います。なので、そこに関してもどかしさはあるかなと思います」。

昨年の入団会見で、大谷は自らを「まだまだ完成された選手ではない」と表現しました。

裏を返せば、伸びしろは無限大。

ひょっとすると、今、感じている「もどかしさ」も、大谷にとっては想定内なのかもしれません。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)