エンゼルス大谷翔平投手がフル稼働したオールスターが、無事に終了しました。ホームランダービーに始まり、史上初めて投打の「二刀流」で選出され、実際に打って投げたわけですから、日本だけでなく、全米中でも大谷が話題を独占したのも当然でした。それぞれのイベントをライブ中継した「ESPN」「FOX」「MLBネットワーク」でも、ほぼ大谷の映像のオンパレードで、インタビューにも引っ張りだこ。米国内でも、間違いなく、注目度はダントツでした。

投手としても打者としてもトップレベルにあるわけですから、ファンが注目するのは自然です。ただ、今年の大谷の場合、事あるごとに屈託のない笑顔を見せていることが、かなりのイメージアップにつながっているような気がします。

一般的に、日本人は外国人に比べると、「喜怒哀楽」の感情表現があまり得意ではないと言われてきました。特に、野球選手などアスリートの場合、対戦相手への敬意や礼儀を大切にするため、プレー中には表情を変えないようにする習慣が身についている部分があるのかもしれません。

もちろん、試合展開にもよりますが、大谷の場合、公式戦中から価値ある本塁打を打てば、ニコニコ顔でベンチへ戻ってハイタッチを繰り返します。ファウルチップが捕手に当たった際には、「ごめん。大丈夫?」と声をかけた表情も話題を集めました。劇的なサヨナラ勝ちの生還後は、ホーム後方であおむけになって上空へ向けてガッツポーズ。かと思えば、ピンチを三振で切り抜けた直後には腹の底からほえるなど、投打にわたって感情を豊かに表現しています。

今回の球宴で、大谷に単独インタビューを試みたESPNの看板女性記者マーリー・リベラさんは「なんてナイスガイ。すっごくよくしてくれた」と、早くもゾッコンでした。スポーツに国境はないとも言われますが、直接に言葉を通さなくても気持ちは伝わるもので、大谷が米国のファンに受け入れられている理由が、素直な感情表現と、日本人らしい礼儀正しさと言っていいのかもしれません。

日本人の感覚からすると、喜怒哀楽の「怒」の表現には少なからず抵抗感があるとは思いますし、審判への不信感を見せるのは賢明ではないでしょう。ただ、メジャーには、かつてマリナーズなどを率いたルー・ピネラ監督のように、激情に任せてグラウンドを蹴り上げたり、ベースを放り投げて大人気を博した天性の“エンターテイナー”もいます。

大谷の場合、すべては自然に湧き出る感情表現なのでしょう。

勝てば全身で喜び、負ければ悔しがる。

国籍、人種、老若男女を問わず、より多くのファンから末永く愛されるうえでも、今後とも、好感度抜群の「翔平スマイル」を見せ続けてほしいものです。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)