メジャーのポストシーズンで熱戦が繰り広げられる中、13日からアリゾナフォールリーグ(AFL)がスタートしました。各球団の若手有望選手が集まるリーグで、アリゾナ州内で6チーム(グレンデール、メサ、スコッツデール、ソルトリバー、ピオリア、サプライズ)に分かれて11月19日まで各30試合ずつを行い、同13日には「フォールスターゲーム」(オールスター)、同20日に優勝決定戦が行われます。

マイナーのリーグですから発展途上の選手がほとんどですが、AFLに選出されるということは、メジャーへの第1歩と言っても過言ではありません。実際、1992年にスタートしたAFLからは、これまでに3000人以上の選手がメジャーデビューを果たしています。デレク・ジーター(元ヤンキース)、マイク・トラウト(エンゼルス)、ブライス・ハーパー(フィリーズ)、マックス・シャーザー(ドジャース)らのスーパースターも同リーグの経験者です。過去、オールスター321人出場者、MVP21人、サイ・ヤング賞6人、新人王32人を輩出と聞けば、若手の登竜門というよりも「スター予備軍」と言い換えてもいいでしょう。

依然としてコロナ禍でもあり、観客こそまばらですが、各球場のネット裏には、スピードガンやストップウオッチを手にした各球団のGMやスカウト陣がズラリと並んで、選手の動きをチェックしています。100マイル(約161キロ)前後の快速球を投げる投手もいれば、パワフルな長距離砲、鉄砲肩の捕手、快足の野手など、魅力的な選手がゴロゴロいます。ただ、スカウト陣は「結果は関係ない」と口をそろえるように、このリーグでは若手選手のポテンシャルの高さや成長度、将来性を見極めようとしています。

ダイヤモンドバックス吉川峻平投手(26)が所属する「ソルトリバー」は、ダ軍のほか、ロッキーズ、メッツ、タイガース、ブルワーズ傘下の監督、コーチ、選手で構成されています。他チームも同様で、いわば寄せ集め集団ですが、他組織の指導者や有望選手と一緒にプレーすることは、若い選手にとって大きな刺激にもなるはずです。もちろん、各チームごとの育成方針もありますが、組織の壁を越えて球界全体で若手育成に取り組むのも、メジャーならではでしょう。

今年のAFLのメンバーから、来季はどんな選手が飛躍するのか。吉川を含め、若手選手の成長を見守るのも、野球の楽しみ方のような気がします。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)