今季の日本シリーズはヤクルトとオリックスの組み合わせになりました。その結果、ホワイトソックスなどで活躍したヤクルト高津臣吾監督と、2016年から2年間、コーチ留学でパドレスに在籍したオリックス中嶋聡監督が、ともにメジャーの野球を経験していたのは、興味深い部分です。

基本に忠実で勤勉な日本人の野球観や「野球IQ」の高さは、これまでメジャーでも高く評価されてきました。日米間の交流が盛んになった今でも、選手の身体能力だけでなく、トレーニング方法、調整面などでも両国の違いは少なくありません。ボールも違えば、環境、文化も違います。

ただ、日米両球界の長所や短所を知ることによって、より良い戦術、戦略、スタイルが生まれる可能性は高いはずです。高津、中嶋両監督が、激しいペナントレースを制し、CSを勝ち抜いた一因には、持ち前の「野球IQ」の高さに米国での経験が加味されたこともあるような気がします。日本シリーズ目前で敗れたロッテ井口資仁監督がメジャーを経験しているのも、偶然ではないかもしれません。

その逆パターンで、日本球界を経験した外国人選手が引退後、メジャーで優秀な指導者になっている例も増えています。近鉄、ヤクルトなどで「赤鬼」のニックネームで活躍したチャーリー・マニエル氏は07年、フィリーズの監督としてワールドシリーズを制覇。その当時、「日本人は本当によく練習する。調子が悪くなったら練習する。それは当たり前のこと。だが、米国人は練習しない」と、日本語で「レンシュー」と言いながら日本野球の良さを力説していました。

現在のメジャーでは、巨人に在籍したゲーブ・キャプラー氏がジャイアンツ、ヤクルトでプレー経験のあるトーリ・ロブロ氏がダイヤモンドバックスの監督を務めています。2人とも日本で目立つような活躍はできませんでしたが、その一方で、異国でプレーすることの難しさを体験しました。マニエル氏をはじめ、彼らはやはり「野球IQ」が高く、日米両球界を経験している経歴は共通しています。

来季からは、日本ハムの「ビッグボス」新庄剛志氏が、現役時代にメジャーを経験した監督として加わります。洋の東西を問わず、指導者に求められる素養は数多いでしょうが、異国での経験が柔軟な思考や引き出しの数を増やしているような気がします。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)