投打二刀流でのサプライズ選出になりました。オールスター戦(13日=日本時間14日、デンバー)にファン投票で初選出されていたエンゼルス大谷翔平投手(26)が4日(同5日)、選手間投票により投手でもダブル選出されました。今球宴で最もホットな話題となっていた投打での同時出場が、一気に実現に向けて動きだしました。

「二刀流」で思い出されるのが、アメリカンフットボールNFLとの兼業選手として有名だったボー・ジャクソン外野手です。1985年に全米大学フットボール最優秀選手に贈られるハイズマン賞を受賞。しかし翌年、NFLのドラフトで約20億円の提示を蹴ってロイヤルズ入団。それでも87年、プレーは野球のオフシーズンに限るという条件でNFLのレイダースと契約しました。MLBとNFLの兼業プレーヤーが誕生しました。

89年はシーズン前半戦でア・リーグ1位タイの21本塁打、23盗塁をマーク。オールスターにはファン投票外野手部門のア・リーグ最多得票で選出され、「1番左翼」で先発出場しました。1回裏にいきなり先頭打者本塁打、しかもセンターオーバーの推定飛距離137メートルという大アーチ。オールスター史上9人目の初打席本塁打、史上5人目の先頭打者弾という華々しい球宴デビューを飾りました。

また、直前の1回表守備では、追加点を防ぐランニングキャッチの好守を披露。さらに、2回の攻撃では内野ゴロ併殺崩れの間に勝ち越しの打点を挙げ、二盗にも成功しました。殿堂入りしたウイリー・メイズ外野手(ジャイアンツ)に続き、1試合で史上2人目となるホームランと盗塁を記録。持ち前の走攻守でアピールし、MVPに輝きました。

「二刀流」の再来という意味で、今年は大谷に「1番投手」での先発出場を期待します。おそらく、ナ・リーグの先発投手は今季の話題をさらうジェイコム・デグロム(33=メッツ)が有力。いまだに驚異の防御率0点台を誇り、100マイル(約161キロ)以上の速球で押す剛速球右腕です。

実現すれば、いきなり1回表に両リーグのMVP候補が火花を散らします。そこでジャクソンのように、大谷の先頭打者本塁打が出たら言うことなし。もしくはヒットで出塁し、自慢の俊足を生かして盗塁などの見せ場も十分期待できます。

そして、1回裏の先発マウンドに上がり、ナ・リーグ本塁打トップを争うフェルナンド・タティス内野手(22=パドレス)、ロナルド・アクーニャ外野手(23=ブレーブス)ら、これまた話題の若きスーパースターたちと対戦が濃厚です。1回を無失点に抑え、かつ三振も奪えば上出来でしょう。それだけで、ジャクソンのように球宴初出場MVPの快挙も十分考えられるでしょう。

また、ダルビッシュ有投手(34=パドレス)も選手間投票で選出されました。今年は「大谷の球宴」という話題性から、デグロムの後を受けて2回から2番手で登板する可能性も十分あります。なぜなら、大谷対ダルビッシュという日本人投手の投げ合いが実現するからです。本場のオールスターはこういう粋な演出が大好きで、過去にはメキシコ人同士の投げ合いなども実現しました。

また、マリナーズ菊池雄星投手(30)も初選出。大谷登板の後を受け、2番手でマウンドに上がれば、高校の先輩後輩による「花巻東リレー」になります。そんなことを想像しながら、オールスター前日の先発ラインアップ発表、さらに夢の球宴を楽しみに待ちたいです。(大リーグ研究家)

(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)