エンゼルス大谷翔平投手(27)が12日(日本時間13日)、オールスター前夜祭恒例のホームランダービー(本塁打競争)に日本人選手で初出場します。1985年にスタートして以来、さまざまな名勝負や名場面がありました。

最も印象深いのは94年、ピッツバーグのスリーリバーズスタジアムで行われたホームラン競争です。ホワイトソックスの巨漢一塁手、フランク・トーマスが左中間スタンド4階席まで届く519フィート(約158メートル)の超特大アーチをかっ飛ばしました。また、ボルティモアで行われた前年93年には、マリナーズのケン・グリフィー・ジュニア外野手の放った一打が、ライト場外にあるレンガ造りの倉庫に直撃。465フィート(約142メートル)の特大アーチは、92年開場のオリオールパーク・アット・カムデンヤーズで、他の誰も当てたことがない伝説のアーチになっています。

当時からホームラン競争では驚くほど打球が飛ぶと思っていましたが、後に、大リーグ公認球より微妙に小さいボールを使用していることが判明。元エンゼルスの強打者で同競争に出場したティム・サーモンも「普段とは違うボールが使われている」と証言しているので、間違いないでしょう。

確かに、大リーグではやりかねない話です。1990年代後半、マーク・マグワイア(カージナルス)とサミー・ソーサ(カブス)が史上空前の本塁打王争いを繰り広げた際、ストライキによる人気回復のために「飛ぶボール」を使っていたと伝わります。2019年に史上最多の本塁打数を記録したときも飛ぶボールが話題となり、今年はホームラン数を抑えるために低反発球が使われるようになりました。

さて、今年は大谷が優勝の本命であることは間違いないでしょう。なぜなら、ホームランになる打球速度と角度を表す指標、いわゆる平均バレル率が断トツだからです。また、本塁打の平均飛距離も他の出場者を圧倒しています。

ホームラン数とともに、打球の飛距離にも注目です。舞台は、標高1マイル(約1600メートル)の高地にあり、別名「マイルハイシティー」と呼ばれるコロラド州デンバーのクアーズフィールド。気圧が低いために打球が飛び、ホームランが出やすいため、大リーグ全30球場でも屈指の「打者天国」です。

大谷は2018年に同地へ遠征した際、試合前の打撃練習でライト3階席まで運びました。推定飛距離は500フィート(約150メートル)。地元ロッキーズの選手でも1人しかいない場所まで飛ばしたことで、話題になりました。2015年のスタットキャスト導入以降、同球場での公式戦「最長不倒」は16年8月6日、マーリンズのジアンカルロ・スタントン外野手(現ヤンキース)が記録した504フィート(約153・6メートル)。参考記録では、ロ軍が最初の2年間使っていたマイルハイスタジアムでは1987年6月2日、マイナーの試合でジョーイ・マイヤー(元大洋)が米プロ野球史上最長とされる582フィート(約177メートル)もの超特大アーチを放っています。

そこで個人的に大谷に期待したいのは、かつてライト3階席20列目にあり、現在は「ルーフトップ」という立ち見エリアへの1発です。ロ軍のチームカラーである紫色の1列に並んでいた座席こそ、ちょうど標高1マイルの高さを示す目印。標高1600メートルに到達する「マイルハイショット」実現なら、まさに後世まで語り継がれる「レジェンド弾」になるでしょう。そして日本人初出場でホームランダービー制覇なるかにも、大いに注目したいです。(大リーグ研究家)(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)

ホームランダービーのトーナメント表
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