16日から後半戦がスタートしました。最大の注目は、エンゼルス大谷翔平投手(27)が日本人初の本塁打王、そして夢の60号大台到達なるかに集まります。

球宴を挟んで両リーグトップの33本塁打で折り返し、年間60発ペースという驚異的な量産モードで後半戦に突入しました。大リーグ史上、シーズン60本塁打以上は5人だけ。そのうち、バリー・ボンズ(ジャイアンツ)、マーク・マグワイア(カージナルス)、サミー・ソーサ(カブス)の上位3人はいずれも、1990年代後半から2000年代前半までのステロイド(筋肉増強剤)使用が黙認されていた時代でした。したがって、正真正銘の60本以上は、あのベーブ・ルースとロジャー・マリス(ともにヤンキース)の2人しかいません。

ルースは1927年、前人未到の60本塁打を記録。当時は不滅の大記録と言われました。しかし、マリスが1961年に61本塁打を放ち、ヤ軍の大先輩ルースの記録を破りました。ただ偉大な記録を破ってはならぬと重圧に襲われ、脅迫までされました。また、ルースは154試合制で60本を打っており、マリスは162試合制で61本という注釈付きで並列扱いされました。晴れて正式記録になったのは、約30年後のことです。

3番ルースは当時、「鉄人」ルー・ゲーリッグと史上最強とも称される3、4番コンビを組み、ゲーリッグの47発と合わせて107本塁打をマーク。一方、3番マリスも史上最強のスイッチヒッター、ミッキー・マントルとの3、4番コンビで、「MM砲」という言葉も生まれました。そして61年は、マントルの54発と合わせて計115本塁打を記録。ちなみに、マリスはその年、敬遠四球が1つもありませんでした。

そういう意味で、現役最強打者マイク・トラウト外野手(29)が今月中にも復帰できそうなのは、大谷にとっても朗報です。開幕から主に2番大谷、3番トラウトの打順で、大谷は開幕38試合でわずか8四球。しかし、5月18日にトラウトが右ふくらはぎの張りで戦線離脱して以降は、46試合で30四球、うち5敬遠と勝負を避けられるケースが急増しました。

それでも、メジャートップ9・12打数に1本の割合でホームランを量産し、「四球攻め」を克服しました。再び大谷の後をトラウトが打つことによって、相手投手は大谷と勝負するはずで、申告敬遠など絶対にあり得ないでしょう。現在のメジャーで、トラウトほど頼りになる援護砲は存在しないからです。

ホームランダービー出場者が陥りがちな後半戦のスランプ、今季は夏場の32日間で32試合という過密日程からくる体力消耗やケガさえなければ、初タイトルどころか夢の60発を大いに期待しましょう。(大リーグ研究家)(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)