今季、エンゼルス大谷翔平投手(27)は可能性があった最終戦に先発登板せず、1918年ベーブ・ルース(レッドソックス)以来となる「2桁勝利&2桁本塁打」は来季以降に持ち越しとなりました。

しかし、ルースが投打二刀流として最高の成績を収めたのは、翌19年シーズンでした。当時、大リーグは「飛ばないボールの時代」とされ、投手によってゲームが支配されていました。大リーグを代表する左腕投手だったルースは17試合、うち15試合に先発登板。133回3分の1を投げて9勝止まりでしたが、防御率2・97の好成績を挙げました。

一方、今季の大谷は130回3分の1を投げて9勝、防御率は3・18。もし最終戦に投げていれば、ルースの投球回数を上回っていたはずです。また、9月3日時点ではちょうど同じ防御率2・97でした。そういう意味では、ほぼ同等の成績と言えるでしょう。

打撃に関しては、ルースは543打席に立って114打点、長打率6割5分7厘。代名詞ともいえる本塁打数は29本ですが当時、これほど多くのホームランを打つ選手はいませんでした。ルースがバットを振る姿は最高に美しく、「芸術品」とも言われました。また、行く先々の球場で史上最長ホームランを記録。それまで見たこともない打球の飛距離に人々は熱狂し、球場は満員の大観衆。しかも、9回の土壇場で逆転満塁弾など大事な場面でのホームランが多く、当時から人気を独占していました。

一方、大谷は626打席で46本塁打、99打点、長打率は5割9分4厘。最後まで激しいキング争いを演じ、打点も途中までルースを上回るペースでした。長打率も8月4日時点で6割6分とルースを上回る数字を残していました。

夏場以降、各成績ともダウンしましたが、補うようにメジャートップタイの8三塁打や26盗塁などで俊足をアピール。パワーとスピードを兼ね備えた点をトータルで考慮すれば、ルースの最盛期に勝るとも劣らない成績と言えます。

この19年のパフォーマンスにより、ルースはヤンキースの獲得リスト筆頭に浮上。翌1920年1月、当時としては大破格の12万5000ドルで電撃トレードされました。年俸は歴代2位4189安打の「球聖」タイ・カッブ(タイガース)らと並んで球界トップの2万ドル。現在なら年俸300万ドル以上に相当します。

大谷の今季年俸は300万ドル(約3億3000万円)、来季は550万ドル(約6億500万円)ですが、ルースのころはグッズ収入や放映権料などなく、ほぼ入場料収入だけで球団運営されていた時代。ルースの年俸は、現在なら1000万ドル(約11億円)は下らないでしょう。大谷も同等の価値があったとみていいと思います。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)