MLBではウエーバーを経ずにトレードができる最終期限の現地7月31日直前のトレードが今年も複数行われた。今回は特に興味深いものが多かったように思われる。

 特に我々日本人にとって注目されたのは2人の日本人選手のトレードだろう。まさに締切直前に成立したのがレンジャーズに所属していたダルビッシュ有投手のドジャースへのトレードだった。若手有望選手3人との交換することで合意したのである。

 ダルビッシュは今季が6年契約の最終年でオフにはFAとなる。さらにレンジャーズは2日時点でア・リーグ西地区4位、首位アストロズから19ゲーム離されており、プレーオフ進出はほぼ不可能な状態だ。そのためダルビッシュ放出の噂が強く出ていたもの、直前までまとまらず一時は放出を断念したという報道も出ていた。

 一方ドジャースはナ・リーグ西地区で2位に14.5ゲーム差をつけ独走する一方で、エースの左腕クレイトン・カーショーが右腰の張りで故障者リスト入りしており、1988年以来のワールドシリーズ制覇に向けて先発陣を充実させる必要があった。ダルビッシュ獲得はまさに願ったり叶ったりといったところである。

 ダルビッシュと同日、ブルージェイズに移籍することになったがアストロズに所属していた青木宣親外野手だ。青木はマイナー選手と共に左腕の先発投手フランシスコ・リリアーノとマイナー選手の交換となっている。「プロとして適応するだけ」と語るなどトレードを事前に覚悟していたダルビッシュに対し、「俺だったからびっくりした」と青木がコメントしたようにこちらはかなり意外なトレードといえるだろう。青木は6年間で6チーム目の所属となった。ジャーニーマンの印象が強くなってしまったが、同時にどこでも活躍できる選手ということでもある。

 また18日にホワイトソックスとの間で3対4の大型トレードを成立させていたヤンキースはやはり31日にマイナー3選手と交換でアスレチックスのソニー・グレイ投手を獲得した。グレイは今季16試合に先発し、6勝5敗防御率3・43と好調。先発ローテーション入りは確実で、ヤンキースもワールドシリーズ制覇に向け戦力を揃えたと高評価を受けている。

 一方、プロの厳しさを物語るトレードとなったのがタイガースに所属していたアレックス・アビラ捕手のカブスへのトレードだ。ベテランであるアレックスは2人の若手選手と交換で移籍することになったのだが、このトレードを成立させたタイガースのGMはアレックスの父、アルだったのである。チームのことを最優先に考えれば当然の判断ではあるが、やはり意識してしまうのも仕方ないところだ。ただアレックス自身はメジャー9年目のベテランでもあり、「理解できる」と受け入れている様子だったということである。

 様々な思惑が入り混じった締切直前の数々のトレード。全てが成功となるといいのだが。