MLBが現地27日に行われたミシシッピ州の上院補欠選挙の決選投票を巡る騒動に巻き込まれた。これは決選投票で勝利した共和党現職のシンディ・ハイドスミス議員の言動にまつわるもの。

決選投票に向けた選挙戦のなかでハイドスミス議員が集会で、「公開の絞首刑に呼ばれたら、最前列で出席する」と発言したことに端を発する。同地域では奴隷制廃止後も、黒人を首からつるして殺害するなどのリンチ殺人が続いた歴史があるだけに人種差別的だと物議をかもすこととなったのだ。さらに南北戦争で奴隷制維持のために戦った南部連合のジェファーソン・デイビス大統領宅で記念撮影し、「ミシシッピの歴史の最高峰」とキャプションをつけてSNSに投稿していたことなども発覚し、騒ぎが大きくなった。

これに対しハイドスミス議員は「自分の発言を不快に思った人には謝罪します」と述べたものの、対立陣営が自分の言葉をねじまげたと弁明してもいたのである。

こうしたなかハイドスミス議員に対し寄付金の返還を求める企業が続出。焦点があたったのがMLBだった。MLBが法で定められた上限である5000ドルを寄付していたことが発覚したからだ。スポーツ専門局ESPNは25日、MLBの広報担当者が「寄付はMLBのロビイストが出席を依頼されたイベントに関連したものだった。MLBは寄付金の返還を要求している」との声明を出したと伝えている。

さらに27日にはMLB公式サイトでロブ・マンフレッドMLBコミッショナーによる「その発言は大リーグの価値観とは全く相反する」との釈明と、献金先の管理を徹底する方針を固めたことを明らかにしている。ヤフースポーツによるとMLBは過去17年間で300人以上の共和、民主両党の議員に対し約400万ドルを献金しているということだ。

ただこの問題はMLB本体だけで終わらなかった。26日、全国紙USAトゥデーの電子版はジャイアンツのオーナーグループの1人で富豪のチャールズ・ジョンソン氏とその妻が5400ドルを寄付していたと報道。さらにカリフォルニア州オークランドのジョン・ボリス弁護士がファンに「チャールズ・ジョンソンがチームに参加している限り」ジャイアンツの試合をボイコットするよう呼びかけたとしている。「この問題はベースボール・チームをサポートすることよりはるかに重要だ」とも話したということだ。

これに対しチームは声明を出し、「人種差別主義者を決して容認しない」としつつ「オーナーたちにはそれぞれの政治的意見がある」と釈明した。

また地元紙サンフランシスコ・クロニクルによればジョンソン氏は「もし彼女が差別主義者だったら、自分は彼女を支援しなかっただろう。返金を求めるつもりだ」と語ったということだ。

今回の一件はアメリカで依然人種差別問題が根強く残っていることと、そうしたアメリカ社会にMLBが深く関わっていることを改めて感じさせることとなった。