K-12と呼ばれる幼稚園年長から高校までの学童に対する科学教育の促進のため、MLBは大手メディア企業、ディスカバリー傘下のディスカバリー・エデュケーションと提携としたと発表した。

アメリカでもいわゆる理系離れが進んでおり、IT分野などでの人材不足が深刻となっている。そこで近年取り組まれているのがSTEM教育の重要性だ。STEMとは科学、技術、工学、数学の頭文字を組み合わせたもので、K-12の時期にこれらに触れていると将来、理系や理系の職業に進む率が上がるというのである。

そしてそんなSTEMに触れる入り口として近年スポーツを利用しようという動きが活発になっている。スポーツの科学的要素をクイズやゲームにし、そこから身近に学びの機会を与えようというのだ。

今回の提携ではすでにアメリカとカナダで560万人の生徒が使うディスカバリーの科学学習本を元に専用デジタルコンテンツが作成されるということだ。例えば「スタジアムの高度がホームランの数にどう影響しているか?」、「フィールドの表面が選手の速度にどう影響しているか?」といった疑問に対するビデオが制作され、学校などで利用される予定だという。

MLB側としても子供達がプレーに興味をもってくれるだけでなく、ビデオでグラウンドキーパーやデータアナリスト、運営役員といったMLBやチームでのキャリアを紹介することで将来の職業候補に入れてもらえる可能性が高まる。MLBのバーバラ・マクヒュー副社長は「この高品質のデジタルメディア学習ツールは、特にスポーツにおけるキャリアへの応用において、科学者とSTEMについての理解を深める機会を教育者に提供し、学生が私たちのゲームの美しさを一年を通して発見する手助けになるでしょう」とコメントしている。

MLBはコンテンツ制作のため、様々なプレーのデータやビデオ、画像などを提供するということだ。

こうしたSTEMへの取り組みを行っているのはリーグだけではない。学術都市ボストンを拠点とするレッドソックスは地元科学博物館と提携し、独自の科学教材本を制作配布した他、本拠地フェンウェイパークでの試合で小中学生を招待したSTEMデーも開催している。このイベントでは外野フェンス、グリーンモンスターから卵を割れないように落とす実験やコンコースでの科学実験アトラクションなどが展開され、多くの子供達が楽しんだということだ。

このようにリーグやチームが教育機関や企業と手を組み、社会的課題を解決しつつ人気も高めようというまさにウィンウィンを狙った取り組みが進められているのである。