MLBは現地22日、2018年のレッドソックスによるサイン盗みについて調査報告書をやっと公表し、実行者とチームに対する処分を下した。

同チームのビデオ再生システムオペレーターのJTワトキンス氏について「18年のレギュラーシーズン中に少なくとも何度か、許容範囲で試合前に選手に伝えていたサインのパターンの情報を修正、補足するために、リプレー検証を審議する部屋で試合中の映像を使っていた」とした。その上でMLBは同氏に対し、20年のポストシーズン終了まで報酬無しの職務停止とさらに21年のポストシーズン終了まで同職への職務復帰の禁止、さらにチームにはドラフト2巡指名権の剥奪という処分を発表している。

報告書によれば相手捕手のサインのパターンは、レッドソックスの攻撃で二塁に走者がいる場合にのみ、一部の限られた選手の間で活用されていたという。監督だったアレックス・コーラ氏を含め、コーチ陣やほとんどの選手はこの行動を知らなかったともした。

一方でワトキンス氏は「やっていない」と証言し行為を否定したものの、モニタールームに監視者が配置されていた時にはジェスチャーやメモで伝達していたという選手の証言もあったと記されている。

これらの点についてロブ・マンフレッドMLBコミッショナーは報告書で「ワトキンス氏は、試合中に選手に提供した情報が試合前に提供された情報と異なっていた理由について説得力のある説明をできなかった」と述べた。

さらに2017年に行われたアップルウォッチを使用してモニタールームからダッグアウトに解析したサインを伝えたサイン盗み事件でもワトキンス氏が「主要な参加者」であったともしている。

コーラ氏にも今シーズンいっぱいの職務停止処分が下されているが、これは17年にアストロズのベンチコーチとして電子機器を利用したサイン盗みを主導していたことによるもの。この件で同氏は今年1月にレッドソックスから解任されている。

今回のサイン盗み事件については1月から調査が行われていたものの、その後新型コロナウイルスの感染拡大でリーグの活動が停止状態に陥ったことから遅れ、忘れ去られようとしているのでは、との批判が起こっていた。一方、コロナショックで今年のドラフトは5巡程度にまで縮小される見込みとなっており、2巡指名権の剥奪はレッドソックスにとって大きな痛手になるという見方も出ている。