警察に逮捕された黒人男性が死亡した事件で警察と衝突した住民の一部が暴徒化し、非常事態宣言が出された米メリーランド州ボルティモアで、大リーグのオリオールズ-ホワイトソックスが史上前例のないとされる無観客試合として行われた。

 観客の安全に配慮した措置だが、球場周辺には試合を待ち望むファンの姿が見られた。

 住民の暴動のため、前日まで2日連続中止となっていた同カードは、予定より5時間早めて午後2時すぎに開始された。約4万6000人を収容できるスタンドに人影はなく、試合は淡々と進行。1回に地元のオリオールズが大量6点を先制した時も、場内にいつもの歓声は響かなかった。8-2で快勝したものの、オリオールズの4番で黒人のアダム・ジョーンズ外野手はAP通信に対し「スポーツは黒人、白人に関係なく、人々を1つにするもの」と残念がった。

 オリオールズに2009年から11年途中まで在籍し、現在も家族がボルティモアに住むレッドソックスの上原浩治投手(40)は「試合を消化しないといけないし、しょうがない。残念ですね」と話した。

 米メディアによると、野球殿堂などが調べた結果、観客を入れずに行った試合の記録はなく、最低の動員は1882年の6人とみられている。

 MLBコムは「Sound of silence」という書き出しのタイトルでこの試合を報じた。

 ◆無観客試合 ファンを競技場に入れずに行う試合。欧州サッカーでは珍しくない。ファンの危険行為などがあった場合に観客の入場を認めない罰則を科されることがあるためで、Jリーグでも2014年3月にサポーターが差別的な横断幕を掲げた問題で浦和が科された。野球では口蹄(こうてい)疫の感染拡大防止のため、10年の全国高校野球選手権大会宮崎大会で実施例がある。