【サンディエゴ(米カリフォルニア州)=四竈衛】勝ち投手に等しい快投を演じた。左太ももの張りのため故障者リスト(DL)で開幕を迎えたカブス和田毅投手(34)が戦列復帰し、パドレス戦で今季初登板初先発。1点リードの5回2死まで4安打2失点、メジャー自己最多の9奪三振と好投した。あと「1死」で勝ち星こそ逃したが、質の高い投球でローテーション入りを確実にした。

 悔しさと手応えが入り交じった。3-2と1点リードで迎えた5回裏2死一、二塁。マウンドへ歩み寄ったマドン監督にボールを手渡した和田は、目の前の現実にしっかりと向き合った。「まだ余力はあったので、次回はもっと信頼してもらえるようにしたいです」。勝利投手まであと1アウト。非情とも映る交代を、厳しい激励と受け取る謙虚さが、和田らしかった。

 約1カ月半遅れの「開幕」とはいえ、緊張感もブランクも感じさせなかった。試合前には、ビデオ映像とチャートで相手打者の傾向を入念にチェックした。出した結論が、序盤は速球、後半は変化球主体。その対策がはまり、立ち上がりから4者連続三振、3回にも3者連続三振と快調に飛ばした。4回までで早くもメジャーでの自己最多奪三振を更新。4回には「配慮が足りない球」で4番J・アップトンに逆転2ランを喫したが、失投を打者、走者として取り返した。5回の打席では、再三バントの構えで揺さぶり、四球で出塁。ファウラーの右翼線三塁打で一塁から三塁を蹴り、野手並みの好スライディングで同点の生還を果たした。「記憶にないです。三塁まで行けると思ってましたが…」。さらに犠飛が続き、再逆転に成功した。

 ただ皮肉にも、この好走塁が交代の遠因になった。球数は69球。マドン監督は「素晴らしい投球だった。だが(直前に)長いランニングをしたから」と交代理由を挙げた。全力疾走した和田は「息は切れますけど、それで疲れるような鍛え方はしていないです」と振り返ったが、結果的にピンチを招いたこともあり、降板につながった。そして救援陣が無失点で踏ん張り、1点差のまま逃げ切った。

 それでも和田の好投が勝利を呼び込んだことに変わりなく、次回はホームで25日(日本時間26日)ナショナルズ戦での先発が確定した。「次はチームも自分も勝てるようにしたいですね」。無事に「開幕」を迎えた和田の言葉は、最後まで前向きで、力強かった。