30日ぶりの白星で前半戦の最終登板を締めた。ヤンキース田中将大投手(26)がアスレチックス戦に先発し、今季最長の7回2/3、今季最多の114球を投げ、2安打2失点(自責1)で6三振を奪う力投。6月9日以来となる5勝目(3敗)を挙げた。宝刀スプリットにアレンジを加えた新機軸の投球術がはまり、チームの首位ターンも決めた。

 過去4試合、白星から遠ざかった悔しさと教訓を、田中は今季初の100球超えに凝縮した。8回途中まで2安打2失点。2回2死からキャンハに適時二塁打を許して以降は、19打者連続凡退(振り逃げを含む)で締めくくった。「ああいう歓声をもらえるのはうれしいですね」。8回も先頭から2者連続三振でお役御免となり、総立ちの拍手で出迎える地元ファンに向けて一瞬、右手で帽子のつばに触れ、返礼に代えた。

 田中にとってこの1カ月は渡米後、最大の試練だった。体調面に不安があるわけではない。だが2試合連続で自己ワーストの3本塁打を浴びるなど、壁にぶつかった。昨季途中の右肘靱帯(じんたい)部分断裂、超スロー調整の春季キャンプ、4月末の故障者リスト入り…。思い描くペースやイメージで調整は進まず、開幕後は一進一退の状態を繰り返した。

 だからこそ、田中は「自分としっかりと向き合うしかない」と腹をくくった。付け焼き刃で変化を加えても、長続きはしない。登板間のブルペン投球を、これまでの1回から2回に増やし、フォームの微調整を繰り返した。同時に、スプリットにバリエーションを加えることにも着手した。他球団の分析が進み、低めのスプリットを見逃され、カウントを悪くして痛打される対策が必要だった。

 この間に落差、スピード、軌道の異なるスプリットを習得。6三振のうち4つを奪った勝負球だけでなく、カウント球としてもバットの芯を外して幻惑した。「そういう投げ分けをハッキリできているところはあります。日本にいる時は、ストライクからボールになれば振ってくれる、くらいにしか投げてなかった。そのあたりの投げ分けはこっちに来てから、特に今年に入ってからできるようになっている」と進化の手応えがあった。

 速球主体で安定した結果を残せるほど、甘い世界ではない。引き出しの多さは、メジャーで活躍するポイントの1つになる。「いい形で前半戦を終われた。今日みたいな投球をコンスタントに投げていくことが一番」。田中の指先には、確かな感触が残っていた。【四竈衛】

 ▼田中が今季最多114球、今季最長の7回2/3を投げて5勝目。これまでは6月27日アストロズ戦の98球が最多で、100球超えは今季11試合目で初めて。今季は通算投球数が1016。1試合平均は92・4球で、9回平均にならすと136・5球。昨季は20試合中14試合で100球以上を投げ、1試合平均は100・5球、9回平均では132・6球。これで今季は5試合連続90球以上と、1試合平均の球数も徐々に昨季に近づいている。

 ▼田中が7回2/3以上を投げたのは昨年6月28日のレッドソックス戦で完投以来。球数(114)はメジャーで自己3番目、ストライク数(77)は2番目の多さ。