マーリンズのイチロー外野手(42)が、ついに「世界一の安打製造機」として歴史に名を刻んだ。

 9回、日米通算4257本目の安打を放った。日本で1278本、そしてメジャーで2979本。不滅の記録と言われていたピート・ローズ(元レッズ)の大リーグ通算最多安打数を超えた。

 1回の第1打席で捕安を放って日米通算4256安打としてあっさりと最多安打に並び、スタンドやベンチからの拍手に塁上で苦笑い。そして迎えた9回の第5打席、守護神のロドニーから痛烈な右二塁打を放ち、一気に抜き去った。スタンドのスタンディングオベーションに対しては、ヘルメットを取って応えた。

 イチローが、誰も立ったことのない高みに到達した。オリックスの新人だった92年に18歳で初安打を放ってから25年。不世出の天才打者の通算安打数がついに「4257」に達した。「球聖」タイ・カッブだけでなく、不滅と言われていた「ヒット・キング」のピート・ローズの記録も抜き去った。

 11年以降、打率が3割を超えたシーズンは1度もない。昨季は自己最低の2割2分9厘。年齢による衰えを指摘する声に反論できないような成績に、本人も「自分の数字は目を疑うものでした」と語った。しかし、メジャー最年長野手として迎えた今季は、全盛期の鋭いスイングが復活。5月下旬に「3戦10安打」の離れ業を演じるなど、限られた出番で結果を出し続けた。

 試合後は、日米報道陣の前で記者会見を行い、率直な思いを口にした。

 「ここにゴールを設定したことがないので、実はそんなに大きなことという感じはまったくしていないです。それでもチームメートだったり、ファンの方だったり、ああいう反応をしてくれるとすごくうれしかったです。そこですね。それがなかったら、何にも大したことないですね」。

 日米合算の成績は参考記録に過ぎない。しかし、メジャーデビューした01年にア・リーグMVPに輝き、04年にはシーズン262安打を放ち年間最多安打記録を84年ぶりに更新。10年にはローズも達成していない10年連続200安打を成し遂げた。日本球界を経ずに大リーグに挑戦していれば、ローズに匹敵する安打数に達していたと分析する専門家もいる。公式記録でなくとも、「史上最高の安打製造機」と呼ばれるにふさわしい圧倒的な実績を積み上げてきた。

 追いかける背中は、もう1つもない。まさに前人未到の領域に足を踏み入れた。それでも、イチローが歩みを止めることはない。メジャー通算3000安打まであと21本。もう1つの金字塔に向けたカウントダウンが本格化する。