古巣シアトルのファンへ御礼弾だ。マーリンズのイチロー外野手(43)が、今季1号本塁打を放った。マリナーズ戦に「9番右翼」でスタメン出場し、9回表の第4打席で、狙って右翼席へアーチをかけた。「敵地」にもかかわらず、イチローのボブルヘッド人形が配布された「イチロー・デー」に詰め掛けたファンに感謝の思いを届けた。日米通算25年連続となる本塁打。打点も松井秀喜を超え、日本人メジャー最多の761打点となった。

 感謝の思いを、グラウンド上で伝えたかった。4-10と大差がついた9回表無死。打席に向かうイチローは、古巣シアトルのファンに総立ちで迎えられた。湧き起こった「イチロー」コールには、これが最後になるかもしれないという惜別感が含まれていた。マリナーズ3連戦の最終打席。リーグの違いもあり、次に訪れる機会は、いつになるか分からない。敗色濃厚だっただけに「そういう意味では理想的な場面」と、本塁打を狙いにいった。

 初対戦の救援マーシャルの真ん中高め93マイル(約150キロ)の速球を思いを込めて振り抜いた。知らない投手から狙うならそこしかない。詰まりながらも角度良く上がった打球は、敵地とは思えない大歓声の中、かつて「エリア51」と呼ばれた右翼を越え、スタンドに届いた。シアトルでは12年以来5年ぶり、通算54本目のアーチとなった。

 「印象に残るわね、これは。(本塁打は)イメージはあるじゃないですか。ただそれが実現するかどうかは別の話。そうなったら、そりゃいいよなあ、でもなかなか難しいよなということでしょう」。胸に刻まれる一打となった。